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インタビュー
株式会社ツルハグループドラッグ&ファーマシー西日本/調剤本部 調剤運営部 部長
五郎丸 慎(ごろうまる まこと)さん
調剤ロボットで作業効率化 きめ細やかなサービスを
―2022年5月に移転開院した広島市立北部医療センター安佐市民病院(安佐北区)の敷地内にある調剤薬局のウォンツ薬局安佐市民病院店に調剤ロボットを導入されました。どんなロボットか教えてください。
 当薬局で導入した調剤ロボットは、「ロボピックⅡ」と「ドラッグステーション」の2機種です。どちらも庫内のカセットに薬を分類して保管し、自動でピッキング(選び取る)して間違いなく正確に取り出す装置です。薬剤師は動き回って薬品を探すことなく、手元のトレイに届く薬品をそろえて患者さんに渡すことができます。
 ロボピックⅡの方には、錠剤をプラスチックとアルミでシート状に挟む10錠と14錠の「PTPシート」をセットしています。処方頻度の高い約260品目をカセットに充填しています。処方箋のデータをパソコンに入力すると、装置がカセットから薬を選び出し、区分けしたトレイに薬品ごとに分別します。装置にはPTPシートを切り分けるカッターも付いていて、端数まで自動で数えて調剤できるのが特長です。薬品を装置に充填する際のチェック機能も万全。カセットと薬品外箱それぞれのバーコードを読み取って照合しながら、手作業で充填しています。

左/PTPシートで包装された薬約260品目を充填する「ロボピックⅡ」 右/自動で選ばれトレイに並んだ薬

 ロボピックⅡに入れられないサイズの大きな薬品の多くは、ドラッグステーションで管理します。21錠入りの大きめのPTPシートのほか、目薬や軟こうなども入れられます。ドラッグステーションでは、薬品の入ったカセットがそのまま薬剤師の手元に届く仕組みです。手元のシャッターが開くと、薬剤師は薬を取り出し、数えてトレイに置きます。トレイに載せた薬品の重量で、薬品の数を確認できる監査機能が付いています。端数は、カメラに写した画像で個数をチェックできます。ピッキングの度に重量と数量で端数まで確認でき、安心です。
 入力した薬品の数と、トレイにそろった薬品の数が合っていれば、正解の電子音とともにモニターに〇印が表示されます。間違っていれば、不正解を表す電子音が鳴って、モニターに×印が表示されます。人の目とデジタルによるダブルチェックでミスを回避します。そのため、調剤に不慣れな新人であっても、速く正確にピッキングを行えます。

約600品目の薬が充填された「ドラッグステーション」
左/画像で端数をカウントするカメラと、重量で薬の量を測定する監査機能を搭載 
右/薬の数が合っていればモニターに〇印が表示される
ロボット導入の経緯を教えてください。
 先駆けて2機を運用していたグループ内の調剤薬局が効率的な調剤で成果を上げていたことから、2021年に当社でも導入を検討し始めました。高額な機械の導入に当たって、最も重要なのが稼働率です。どの薬をどの機械にどれだけ入れるかを判断するために検証を重ねました。移転前の旧安佐市民病院のそばにあった当社の薬局のデータを検証し、新しくできる安佐市民病院店なら、2機のロボットを最も効率よく稼働させることができると判断しました。ロボット内に医薬品を保管することで、調剤棚を置くより少ないスペースで効率よく在庫管理ができることも、導入の決め手となりました。
どのような変化がありましたか。
 薬の取り違いなどのミスをしっかり防げるほか、薬品の調剤や管理にかかる時間が大幅に短縮されました。特に調剤に関しては、今までの半分程度の時間で薬を準備できるようになり、患者さんからは「待ち時間が減った」と好評です。特に薬局が混み合う時間帯に効果があり、患者さんの待ち時間を延ばすことなく薬を渡せるようになりました。また以前は、調剤室で作業するスタッフを多く配置していましたが、ロボット導入後は、受付窓口に多くのスタッフを当てられるようになりました。丁寧に薬の説明をしたり、質問に答えて患者さんの不安を取り除いたりするなど、薬剤師が本来力を入れるべき対人業務に時間を使えています。
 当薬局で効果を上げられたこともあり、現在は広島県内で4店、島根県では2店がロボピックを導入しています。ドラッグステーションは、広島県内の3店で導入しています。

ほかにもDXを活用しているサービスなどがあれば教えてください。
 広島県安佐地域は、国が推進する電子処方箋のモデル事業に参加し、全国に先駆けて電子処方箋を取り入れた地域の一つです。当薬局も管理システムを導入して2022年12月に実証運用をスタート。安佐市民病院と連携しています。病院での診察時に電子処方箋を選択した患者さんには引き換え番号が交付され、病院から薬局へデータで処方箋が届きます。現状ではまだ紙の処方箋の利用が大半を占めていますが、今後、活用が進み、服薬データの一括管理や調剤時間の短縮など、患者さんにメリットを感じていただけるものと期待しています。
 また、患者さんの薬剤服用歴(薬歴)を記録するために、クラウド型の電子薬歴システム「musubi」を使用しています。薬歴を記録して服薬指導に生かすことは、薬剤師にとって最も重要な仕事の一つです。過去の薬歴をはじめ、ほかの病院で処方された薬との飲み合わせなどを確認し、服薬指導や健康アドバイスなどを行います。窓口で患者さんと一緒にパソコンを見ながら指導もでき、コミュニケーションツールとしても役立っています。
 あわせて、ウォンツ全店舗でオンライン服薬指導を展開。患者さんは「SOKUYAKU」というアプリをダウンロードして、ビデオ通話で診察や服薬指導を受けることができます。初回は病院で診察を受ける必要がありますが、医師の許可があれば、診察から薬の配達まで自宅で受けられます。
 そのほか、処方箋送信アプリ「EPARK」の利用率も上がってきています。これは、広島市内の基幹病院に設置されていたFAXコーナーが随時運用を廃止していることも理由の一つです。病院でもらった処方箋をアプリで読み込み、かかりつけ薬局へデータで送信することで薬局での待ち時間が短縮されます。「SOKUYAKU」と同様、新型コロナウイルス感染拡大以降、こうしたサービスの利用者が増えてきました。

電子処方箋を取り入れた広島市立北部医療センター安佐市民病院の取り組みはこちら:

県民に対する思いを教えてください。
 ロボピックⅡとドラッグステーションで、当薬局の調剤の約8割をカバーしています。しかし、DXを活用して薬を探したり管理したりする手間を省くことは、薬剤師の仕事を減らすためではありません。薬の知識をもとに患者さん一人一人に丁寧に寄り添うことこそがロボット導入の最大の狙いで、薬剤師の存在意義はここにあると思っています。きめ細やかなサービスで、地域の方の健康を支えていきます。また、電子処方箋やお薬手帳アプリによる処方箋予約など、患者さんにとってメリットのある、DXを利用したサービスは、ほかにもたくさんあります。しかし、患者さんの中には、そうしたサービスに苦手意識を持たれる方も多いのが現状です。提供する私たちも、その便利さを十分に伝えられていないところがあります。誰でも分かりやすく利用しやすい仕組みを整え、便利さを実感していただけるよう努めていきます。

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