当社では新しい鋳造方法を「デジタルキャスト」と名付けました。デジタルキャストは従来からある「ロストワックス精密鋳造法」と3Dプリンターを融合させた新しい鋳造法です。金型の代わりに3Dプリンターで作った樹脂模型を使用するのが大きな特徴です。
従来からあるロストワックスの工程は、金型を作ることから始めます。金型はコンピューターを利用した設計・製造システム(CAD、CAM)で、設計図と機械加工用プログラムを作成します。工作機械で金型を製作(マシニング加工)し、複雑な形状の場合は複数パーツに分けて作ります。マシニング加工後は仕上げとして、加工によって発生する突起物など不要な部分を取り除く「バリ取り」や金型の表面の粗さを減らし精度を上げるための「磨き」を主に手作業で施し、組み立て確認や寸法チェックなどの品質検査を経て完成となります。
金型が出来上がったらワックスを流し込み、ワックス模型を作ります。模型をセラミックでコーティングし、高温の蒸気でワックスだけを溶かします。空洞となった鋳型を焼成炉で焼き固め、溶解させた金属を注ぎます。冷えて固まったら鋳型を割って外し、金属を取り出します。金属は強度チェックなどさまざまな品質検査をして製品として仕上げていきます。
このようにロストワックスは金型製作に多くの工程と時間を要するため納品までは約2カ月かかります。金型はイニシャルコストが10~100万円ほどかかります。設計変更などがあればさらに費用がかさむため、ある程度の注文数がないと採算性も低くなります。
一方、樹脂模型を使うデジタルキャストならこの金型製作が不要です。3Dプリンターで直接、樹脂模型を作って鋳型を製作するので約2週間で納品できる上、金型分の費用も削減できます。これまで小ロットでは採算面で製作困難だった製品のほか、1個からでも注文しやすくなった利点を生かし新しい形状の製品にも低予算でトライできるなど、さまざまな可能性やメリットがあります。