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インタビュー
株式会社ウッドワン/情報システム部 IT戦略推進室 室長
神原 孝吏(かんばら たかし)さん
キッチンを3Dで簡単シミュレーション


―ウッドワン(廿日市市)のシステムキッチンを、3次元(3D)で簡単にシミュレーションできるサイト「WOODONE AR Kitchen Simulator」について教えてください。
 お客さまがイメージするシステムキッチンをサイト内で作り、自宅にマッチするかどうかを確認していただけるサービスです。2023年9月に始めました。
 3Dキッチンの作成手順としては、最初に「ビンテージ」や「フレンチテイスト」「カントリー」など八つの画像から、イメージに近いキッチンを一つ選びます。次に「壁付け」「対面フラット」など設置方法を選択。続いてキッチンの扉の樹種や色、シンクの素材や水栓の形、食洗機、加熱機器の種類などを選んでいくと完成します。スマートフォンやタブレット端末を使っていただければ、AR(拡張現実)機能を使ってご自宅など現実空間に実寸大の3Dキッチンが配置できます。
ARキッチンシミュレーター https://www.woodone.co.jp/sim/ar_kitchen/
実際の空間にARで配置した3Dキッチン
 サイトには「簡単見積もり機能」もあり、キッチンの合計金額をリアルタイムで表示します。完成したキッチンには、アルファベットと数字を組み合わせた「モデルID」が発行され、当社のサーバーにデータが保存されます。画面に表示される「予約へ進む」のボタンを押すと、ショールーム「ウッドワンプラザ」のサイトに移行し、そこから身近にあるショールームの来場予約ができます。
 キッチンをご検討中のお客さまには、ご自宅でのシミュレーションからウッドワンプラザの予約まで、ワンストップでサービスを提供できます。また、相談の際もデータが保存されているため、シミュレーション結果をウッドワンプラザで表示しながら話が進められます。
「簡単見積もり機能」で合計金額がリアルタイムに表示される
シミュレーションできるキッチンの種類や、サービス導入までの背景、狙いを教えてください。
 2008年に誕生した無垢(むく)の木のキッチン「su:iji(スイージー)」と、鉄のフレームをアクセントに無垢の木と組み合わせた「フレームキッチン」がシミュレーションできます。それぞれ、木のぬくもりのある暮らしを提案する総合建材メーカーの当社が、森を育てるところから作ったキッチンです。お手入れが簡単にできるように、水や汚れに強い特殊ウレタン塗装を木に施しています。
 リフォームや新築でお客さまがキッチンを選ぶときに重要なのは、ご自宅に設置した時のイメージを持つことです。これまでは、初めて来店された方にはカタログや施工事例を見てもらいながらショールームをご案内していました。また、工務店さまから依頼を受けて作成する3Dの図面「プレゼンボード」を事前にお渡しして、ご検討いただいていました。キッチンの形や色を変えたいというご要望が出てくると、もう一度作り直す必要があります。
 来店される前にお客さまが直感的に「自分が欲しい」と思うキッチンが試せるよう、「WOODONE AR Kitchen Simulator」を導入しました。ご自宅にマッチするかどうかを確認した上で、ショールームへ足を運んでいただけるため、接客後、オーダーに沿ったプレゼンボードを作る際にスムーズに話が進められます。
サービスの導入前後で業務の進み具合はどのように変わりましたでしょうか。
 サービスを導入する前もある程度、お客さまはインターネットでキッチンの情報を調べた上でお越しくださっていました。しかし、デザインや予算などについて1から話をするとなると、打ち合わせは長時間になってしまいます。導入後は、お客さまが事前にサイトで3Dキッチンを試作してくださると、イメージに沿ったデザインや組み合わせの情報が当社のスタッフとすぐに共有できます。お客さまのニーズに合わせ、スピーディーに最適な提案ができ、打ち合わせの時間が短縮できています。
 また、シミュレーションのサイトを経ずに来場予約をされた方には、予約返信メールで3Dキッチンが作れるサイトをご覧いただけるようお勧めしています。
導入で苦労した点はありますか。また改良すべき点も教えてください。
 シミュレーションでキッチンの合計金額を出すときに、樹種や機器などの組み合わせを変えると単純に足し引きすればいいだけではないため、価格の整合性を取ることに苦労しました。例えば食洗機を変えると、食洗機を納める場所のサイズも変わります。ほかにも樹種によって取っ手が付くものと付かないものがあるなど複雑です。お客さまがシミュレーションで食洗機を変更した場合、システム上では食洗機の変更に加えて食洗機を収めるキッチン本体の造りを変える指示を出す必要があったり、キッチンの樹種を変えると樹種によって取っ手を付けるかなくすか追加の指示を加えたりするなど、細かい調整が必要でした。お客さまにシミュレーションを快適に使っていただくため、今後は新商品の発売に合わせて内容変更が必要となります。また、カップボードなどの収納もシミュレーションに加える必要があると考えています。
他にもDXの取り組みとして、固定電話をなくして全てスマートフォンに替えられました。導入前にあった課題と導入後の成果を教えてください。
 全国約70カ所の拠点に配置していた固定電話を廃止し、2017年からNTTドコモさまのクラウドPBX(構内交換機)「オフィスリンク」を導入しています。PBXは複数の電話機をコントロールし、外線と内線の接続を制御する働きをします。
 導入前のPBXはクラウド上の仮想ではなく実際の装置で、運用やメンテナンスに多くの費用や手間を費やしていました。老朽化による取り換えも検討していました。また、オフィスの固定電話から社員用携帯電話への外線通話が増えていたため、通話料の増額も課題でした。これらの解決策として、NTTドコモさまから提案されたのが「オフィスリンク」によるPBXのクラウド化と固定電話のスマートフォン化でした。「オフィスリンク」の導入で、各拠点のPBX設置が不要になり、メンテナンスなどの設備運用にかかる費用や手間を大幅に削減できました。またスマートフォンに替えたことでドコモのエリア内ならどこでも内線通話できるようになり、通話料が削減できました。
 固定電話をなくしてスマートフォンに替えた時は、スタッフに使い方を知ってもらうため、使用方法のマニュアルを作り講習会を開きました。それでも導入直後は使い方についての問い合わせが多くありました。特に電話を転送するとき、電話番号ではなくて社員番号を使うため、社員番号を調べてから転送するなど、慣れないうちは大変でした。イントラネットの掲示板に「内線システムマニュアル」を掲載して使用方法をすぐ確認できるようにするなど周知に努めました。運用に慣れた後は「業務上で席空きが多いスタッフに電話を転送した時、つながりやすくなった」「席替えなどの移動がしやすくなった」という好意的な声が届いています。

ウッドワンプラザ(廿日市市)でスタッフがスマートフォンで話す様子
DX推進に向けてのメッセージやPRをお願いします。
 当社もDXに関して世の中のいろいろな取り組みを勉強させていただきました。強く感じているのは、一口に「DX」といってもさまざまなアプローチがあって、決して「万能薬」のようなものがあるわけではないということです。当社のバックグラウンドに即した「ウッドワン流のDX」とは何かを社内でしっかり議論して、着実に進めることが大切と考えております。
 お客さまにいきなりウッドワンプラザへ足を運んでくださいというのは、ハードルが高いと感じる方もいらっしゃると思います。まずは気軽に「WOODONE AR Kitchen Simulator」に触れてみてください。その後、ウッドワンプラザで実際に無垢の木の滑らかな手触りなどを体験していただければと思います。
 シミュレーターの導入を通じて、従来の方法では難しかったショールームなど対面の場面でのイメージ共有やコミュニケーションの改善を実現しました。これからもお客さまのニーズに合わせた最適な提案をしていけるよう、努めてまいります。
話を伺った戦略統括本部コーポレートコミュニケーション室広報課の松岡美姫さん(写真左)、情報システム部IT戦略推進室室長の神原孝吏さん(同中)、戦略統括本部コーポレートコミュニケーション室広報課課長の中道圭一さん(同右)
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