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インタビュー
三島食品株式会社/工場システム担当
清水池 渓人(しみずいけ けいと)さん
ウイングアーク1st株式会社/営業本部 リージョナル営業統括部 担当マネージャー
猪内 誠司(いのうち せいじ)さん
生産状況を「見える化」するツール「MotionBoard」を導入
三島食品の清水池さん(写真左)とウイングアーク1stの猪内さん(同右)
―三島食品さまは主力生産拠点の広島工場に、ウイングアーク1stさまが開発したBIダッシュボード「MotionBoard」を、2017年7月に導入されました。どのようなシステムでしょうか。
 清水池 「MotionBoard」は、現在の製造状況や工場内の温度・湿度などのデータを、インターネットブラウザを使いグラフや表として「見える化」できるシステムです。取得したデータをリアルタイムにダッシュボード画面上に表示でき、さまざまなシステムや用途に拡張が可能な、使い勝手のよいシステムです。プログラムレスで、視認性に優れた画面を簡単に作成することができます。
 MotionBoard導入前は、作業工程で機械が停止した時間などを「どういう理由で何分止まった」と、エクセルに入力・集計し、月ごとに紙に印刷し貼り出していました。元々、当社では、工場の現場における生産状況などを掲示し「見える化」する文化が根付いていました。しかし、掲示物は手作りゆえ、情報がリアルタイムではない。設備の稼働状況や生産実績など、リアルタイム性や正確性が要求される情報の可視化ができていないという課題がありました。
 DX化の必要性を感じた上層部が、データ収集や分析、可視化ができるツールを導入しようと決断。そこで、いくつかのBIツール(データを分析し可視化するソフトウェア)やスキャダ(生産工程の自動化を図るシステム)を比較検討し、MotionBoardの拡張性やユーザビリティーを評価しました。導入に際しては、日本製のツールであることが大きかったです。MotionBoardの顧客には国内の製造業が多いこともあって、当社のニーズに沿った、使いやすいデザインであったことが決め手でした。
事務所に取り付けられている大型のモニター。棒グラフのピンク色は生産が順調であることを示す。手作りの掲示をしていたときの「ピンク色=順調」を引き継いでいる
―MotionBoardにはどういった活用法や機能がありますか。それぞれ教えてください。
 清水池 主に四つの業務に生かしています。まずは、生産スケジュールの管理。従来は、その日の作業が終わった夕方に、紙で生産状況の報告があり、そこでやっとスケジュールの進捗を把握していました。MotionBoard導入後は、生産状況がリアルタイムで可視化されるので、現場の作業員は画面を見ることで「あそこが遅れている」など、すぐに把握できるようになりました。二つ目は、工場内の温湿度管理です。例えば、袋に詰める前のふりかけを置いている部屋の温度や湿度は、センサーが読み取りMotionBoardに集約されます。今までも温度や湿度のデータは取っていましたが、MotionBoard導入により「不快指数」も分かりやすく可視化され、「このスペースは高温になりがちだから改善したい」という具合に職場に対しての環境意識が高まりました。三つ目に、原材料の品質管理があります。例えば、ゆかりに使用する赤しそ原料が入っている樽に貼り付けている2次元コードには、原料の産地や加工日、製造日などの情報が入っていますが、この製品にはどの産地のシソをどれくらいの割合で混ぜたのかなども、全てMotionBoardで管理しています。仮に異物の混入があった場合、そのシソはどの産地のものなのか、従来は紙をめくって調べていましたが、MotionBoardですぐに検索できるようになりました。四つ目は、生産設備の稼働監視です。MotionBoardが設備全体を監視しているので、例えば、計量器が動いているか、止まっているのかなど、現場に見に行かなくても大型モニター上で把握できるようになりました。
 MotionBoardの特徴を生かした活用も、積極的に取り入れています。異常値が出たときに、MotionBoardが数値を把握し、アラート通知の発信が可能になりました。これにより関係者にメールがすぐに届けられます。さらに、包装機の停止要因など、業務インシデントも可視化されるので、状況把握や対策もスピーディーになっています。
―導入前後で、何がどのように改善されましたか。
 清水池 導入前も、生産数量をインターネットブラウザで確認できるような管理画面を作っていましたが、1画面作るだけでも3日くらい時間を要していました。しかし、MotionBoardなら、1時間程度で簡単に画面の設定ができます。そのため、簡単な掲示物でもMotionBoardに置き換えることができ、リアルタイム性も高まりました。現在、100を超える画面を作成し別々に点在していた情報を集約し、一つの画面に表示することでアクションがとりやすくなりました。工場のさまざまな数値データが集計でき、「見える化プラットフォーム」としての役割を果たしてくれています。
清水池さんが制作し、現在使用している管理画面。ここでは、どの工程でどんな異物がいくつ見つかったか把握できる
―ウイングアーク1stさまはどのような企業になりますか。業務内容や取り組みを教えてください。
 猪内 東京に拠点を置く会社で、ソフトウエア開発とサービスを通じて、企業のデータ活用を支援しています。主力製品は帳票基盤ソリューション「SVF」で、帳票ツールでは現在国内シェアナンバーワンを誇ります。さらに、企業間で流通する帳票の最適化を実現した電子帳票プラットフォーム「invoiceAgent」はあらゆる帳票を電子保管し、電子帳簿保存法やインボイス制度にも対応しています。この二つの帳票・文書管理事業に加え、集計・分析プラットフォーム「Dr.Sum」とデータ可視化ツール「MotionBoard」といったデータエンパワーメント事業があります。これらのプロダクトサービスを通じ、お客さまの期待を超える製品やサービスを提供していくのが、私たちの目指す姿です。常にお客さまの視点に立ち、声に耳を傾け、現場の課題解決に向けたご提案を行っています。
―MotionBoardはどのようなシステムになりますか。技術的な部分を教えてください。
 猪内 データ活用に必要な機能を、一つのプラットフォームに集約し、「見える化」するBIツールです。属人化しやすい集計・分析業務を誰でも気軽に行えるようになります。データ入力は使い慣れたExcelで、集計や分析はMotionBoardで、という運用も可能です。
 蓄積されたデータやファイル、画像、動画データを活用し、ノンプログラミングで多彩に表現できるのが大きな特長です。例えば販売実績と顧客管理データ、画像を、1画面上に仮想統合することも可能です。さまざまなデータソースをつなぐコネクターが豊富で、60種類以上のデータソースへの接続ができます。また、表現力が豊かで、数量のデジタル表示、ゲージの表示、集計表や明細表などの表示、グラフ、チャートなどを分かりやすく自在に組み合わせられます。これにより、画面上で、生産現場のモノの稼働状況、営業状況の確認、財務状況、残業超過などの勤怠状況、地図機能を使ったエリア分析など、現状の傾向や問題点を素早く把握できます。さらに、機械や設備、センサーなどのIoTデータとリアルタイムに連携するための「API機能」を搭載しており、データを瞬時に可視化します。これらの特長を生かし、組織全体で共通の指標を見える化して、新たな行動につなげます。
 「意思決定に必要なデータがすぐに手に入らない」「多面的・直感的な数字に対して、内容の深掘りができない」「レポート作成に時間がかかり、分析まで手が回らない」という現状をサポートするために開発しました。
MotionBoardは、データ活用に必要な機能を、一つのプラットホームで提供するBIツール
三島食品さまの現場からは、導入後どのような声が上がっていますか。
 清水池 事務所に居ながらリアルタイムの生産状況を確認することができるので、担当者からは「現在の生産進捗がわかるため、生産予定を組む際に活用している」などの声がありました。また、原材料の品質管理ができることにより、「これまでの紙に比べて、目視検査で発見した異物の数や傾向を振り返りやすい」と、「見える化」の効果が表れています。設備の稼働監視ができるようになり、従来は冷蔵庫の温度を記録するために、毎日工場内を回っていた担当者は、「今は15分ごとに冷蔵庫の温湿度が記録されるので、記録の作業がなくなった」と話し、その時間を別の業務にあてています。また、コンプレッサーのエア漏れのデータを集め可視化できたことで、コストをかけてすぐに修理しなくても影響がない程度だと分かった、という事例もありました。
MotionBoard(左)のモニター画面の横には、「目で見る管理板」も健在。何でもDX化するのではなく、リアルタイムでなくてもいいもの、紙の掲示でよいものは従来のやり方も生かしている
三島食品さまの現場の声を受け、ご感想はいかがでしょうか。三島食品さまへさらなるアドバイスやご提案があれば教えてください。
 猪内 MotionBoardを導入する上で重要なのは、管理画面を作るだけではありません。自社の業務にどんな課題があり、どのデータを取り出してどうしないといけないか、現場の状況とデータの生かし方が分かっていて、かつ、目的にあった画面を作ることができる人がいる、ということが重要です。三島食品さまは、導入当初からダッシュボード開発担当である清水池さまの頑張りがあり、他社さまに比べ、非常に高度かつ迅速な活用の展開をされています。他ユーザーにとって非常に参考になる情報をいただき、感謝しております。
 お客さまの成功事例や失敗事例などさまざまな活用ノウハウについて、弊社ユーザーコミュニティー「nest(ネスト)」で共有し、さらなるデータ活用推進に向けてディスカッションしてもらっています。
「会社の抱えている課題が一番分かっているのは、会社の人。清水池さま(写真左)のような軸になる人がいれば、MotionBoardの活用は鬼に金棒です」と話す猪内さん(同右)
MotionBoardのほかに、それぞれ力を入れているDXの取り組みはありますでしょうか。
 猪内 生産ラインや作業現場から収集できる大量のIoTデータを保存し、「MotionBoard」と連携して高速に集計できるデータベース製品「Dr.Sum」があります。これは、企業のデータ活用に必要な機能を網羅するデータ分析基盤です。「分析用データベースエンジン」と、連携して使用できる「ユーザーインターフェイス」「データ連携ツール」から構成されています。例えば販売、会計、生産、在庫などの業務システムを、データ連携ツールが取り込み、大量データの蓄積や高速集計、多重処理が可能なデータベースエンジンへ。エンジンは、データベース構築や運用に必要な基本的な機能を網羅しており、ノンプログラミングで開発を進めることが可能です。ユーザーは、欲しい情報を「見える化」「分析」し、エクセルやレポート、実績一覧などで取り出すことができます。「Dr.Sum」を導入することにより、IT担当者は都度のデータ抽出作業から解放され、本来の業務に集中でき、現場のユーザーは、IT担当者に依頼しなくても、自分のPCやタブレットから欲しい情報を入手できるほか、自由にデータ分析もできます。
 「Dr.Sum」については三島食品さまの営業部門で、販売データの保存集計用にすでに活用していただいています。今後はぜひ製造部門でもご活用いただければと思っております。
 清水池 コロナ禍の在宅勤務などに対応するため、リモート会議やクラウドサーバーの活用が、社内で一気に広がりました。生産部では、従来は紙に記入していた点検表などをオンラインで共有し、ペーパーレス化を進めています。
DX推進に向け、県民に対してPRなどメッセージをお願いします。
 清水池 昨今はどの業界も人手不足ですので、業務経験の長さに関係なく、良い品質の製品を安定して製造することが必要だと思います。DX化を進め、ベテラン作業担当者の経験を数値化し、その情報を蓄積・分析することで、誰でも同じ品質の製品が作れることを目指しています。
 工場見学に訪れてくださる県内の小学生さんも多く、会社の思いや商品の魅力を発信していきたいです。今後も県民の皆さまに親しみを持っていただき、愛される会社でありたいです。安心して良い品質の製品をお届けできるよう、今後も頑張ってまいります。
 猪内 データ活用によるDX推進は、企業さまの活動にとって必要不可欠な取り組みになってきました。DXといっても、一つ一つは難しいことではありません。帳票や文書管理、蓄積したデータの活用など、気になることがあればご相談ください。三島食品さまのような実践事例も多く出てきており、ダッシュボード作りや、実際の情報活用が無料で体験できるハンズオンセミナー、無償トライアル環境の提供などを積極的に行っております。まずはデータ活用の実践チャレンジを行っていただきたいと思います。私たちは、「データに価値を、企業にイノベーションを」をモットーとしています。「データ」が、これからの新しい資源として社会から求められるようになると考えているからです。企業さまには、データのさらなる活用で、その価値を高めていただきたい。そのお手伝いができたらと願っています。
MotionBoardハンズオンセミナー申し込みサイト
https://www.wingarc.com/seminar/index.html?products=MotionBoard
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