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インタビュー
カルビー株式会社/カルビージャパンリージョン西日本事業本部 ゼネラルマネジャー
溝口 誠(みぞぐち まこと)さん
次世代型生産体制をDXで実現する「せとうち広島工場」新設へ
―広島市佐伯区に新工場「せとうち広島工場」を新設する計画です。新工場の概要を教えてください。
 カルビーの新工場「せとうち広島工場」は、最新のDXや地球環境に配慮した設備の導入により、環境負荷の低減や生産効率の向上を実現する「スマートファクトリー」を目指しています。「人と地球の笑顔をつくりだす、未来を形にする工場」をコンセプトに、三つの特長を掲げています。一つ目は「優れた環境性能」。例えばじゃがいもを切ったときに出るでんぷんを、他のお菓子の原材料に利用したり、揚げる工程でフライヤーから出る廃熱を回収し、温水として活用したりすることで、環境負荷の低減につなげます。二つ目は、DX技術を活用した生産ラインの自動化、省力化による「生産性の向上」。無人搬送車「AGV」がパレットを自動で動かすことで、重たい荷物を動かす労力がなくなります。倉庫管理システム「WMS」は新宇都宮工場(栃木県)でも導入していますが、製造ラインや資材管理などを自動監視できるのは、せとうち広島工場が当社では初めてとなります。三つ目は、現在、湖南工場(滋賀県)で導入しているIoT技術を活用した、「作業環境の改善」です。工場内にはどうしても暑くなる場所がありますが、人ができるだけ近づかなくていいよう、将来的には状況確認や点検が遠隔でできることを目指します。
 せとうち広島工場は、既存商品の供給能力拡大にとどまらず、将来的な新規の技術・事業展開も視野に入れながら、次世代型生産体制の確立に向けた人財育成を進める拠点としての役割を担います。
 面積は当社最大規模の約10万平方メートル、生産能力は年間約280億円で、主に「ポテトチップス」「Jagabee」、小麦系スナックを製造する予定です。
新工場「せとうち広島工場」外観イメージ
新宇都宮工場の倉庫管理システム「WMS」。商品の入出庫やリアルタイムな在庫管理を可能にするシステムで、新工場にも導入予定
―新工場を設立するに至った背景や狙いを教えてください。いつ本格稼働する予定ですか。
 廿日市市には、「ポテトチップス」などを製造する広島西工場と、「かっぱえびせん」などを製造する広島工場の二つの工場があります。広島西工場は1986年の操業開始から37年がたち、経年メンテナンス、商品需要の拡大・労働力不足に対応する設備の自動化など、生産効率の向上が急務であり、これらを踏まえて今回、近隣の広島市佐伯区に、新工場を建設することになりました。
 最新鋭のマザー工場として他工場の生産現場にも反映させることで、グループ生産部門全体の競争力向上を図ります。2023年4月に着工し、24年度中の稼働開始を目指しています。
―せとうち広島工場にはDXの先端設備を導入し、生産ラインの自動化・省力化を進められるようです。
 湖南工場で実装しているIoT技術を活用したモデルを、せとうち広島工場で応用展開していきます。特長としては四つのポイントが挙げられます。まずは、油分・水分・色味の検査測定の省力化です。従来は、定期的に製造ラインから商品サンプルを取り出し、理化学検査を行っていました。サンプル抽出後、数十分かけて検査結果が出るのを待ち、その結果を現場にフィードバックするまでを、手作業で実施していました。湖南工場では、新しい検査装置を導入。自動でデータを取得し、またオンラインで全量の品質検査が行えるので、検査作業の省力化が可能になりました。製品のトレーサビリティの時間が短縮でき、オンラインで常に製品を監視しているので品質に影響を及ぼす前兆があるとオペレーターにアラートが届くことで、商品ロスの未然防止にもつながっています。
 二つ目は生産状況の可視化です。これまでは、目視による確認と口頭もしくは電話連絡で、生産ラインにおける生産量の状況報告を行っていましたが、生産状況をデジタル化し、可視化できるようにしたことで、離れていても生産状況を確認できるようになりました。口頭や電話連絡では、人それぞれ生産状況を伝えるニュアンスが違っていましたが、より正しい状況把握が可能になりました。
 三つ目は機器の設定切り替えの自動化です。従来は、生産計画に基づき、オペレーターが全ての設備の設定を変更して回っていましたが、各設備に生産計画をダウンロードすることで、自動切り替えが可能になりました。製造が完了したら、すぐに次の製造へと自動で切り替わるので、オペレーターは設定変更の手間がなくなり、「間違えてはいけない」というストレスから解放されました。
 最後は原材料の自動照合です。従来は、オペレーターが端末を使用して、原材料記載の二次元コードを読み取り、原材料コードや商品コードと照合して切り替えていました。湖南工場では、設備に生産計画に基づいた原材料コード・商品コードを転送し、全数を自動照合します。
 こういった生産ラインの自動化・省力化と、より高度な品質管理や高効率な多品種少量生産、将来的には生産ラインの遠隔監視等によるリモートワークの導入を進めることで、従来の1.6倍の生産性で製造が可能になると考えています。
新工場の生産ラインにおいても、検査測定、生産状況の確認、設定切り替え、原材料の間違い防止など、さまざまなDX化を進めていく予定(写真は湖南工場の様子)
―ほかにもDXを活用しているサービスとして、消費者向けの「カルビー ルビープログラム」に取り組まれています。どのような取り組みでしょうか。
 「カルビー ルビープログラム」は、お客さまが購入した商品のパッケージを指定の方法で折りたたみ、撮影していただくことでポイント(ルビー)を貯めるというもの。パッケージを折りたたむことで、各家庭でのゴミの嵩(かさ)を減らすことにつながります。お客さまとのコミュニケーションを深め、お客さまの体験価値の向上を進めていくことを目的とし、スマートフォンアプリを開発しました。リリースから約3年が経過し、登録者数も好調に推移しています。
 貯めたポイントを使って、さまざまな体験プログラムやキャンペーンに応募していただけます。体験プログラムでは、契約生産者の畑でのじゃがいも収穫体験や、じゃがいも貯蔵庫見学など、様々な取組を展開しています。
スマートフォンアプリ「カルビー ルビープログラム」の画面
※アプリ内掲載キャンペーン実施期間は2023年11月6日(月)〜2024年3月25日(月)まで

県民に対して、PRなどメッセージをお願いします。
 カルビーは「人々の健康に寄与したい」との思いから1949年に広島県で創立した企業です。本社を東京に移した後も、広島県には複数の拠点を有し、周辺地域の皆さまのご理解・ご協力のもと事業活動を続けてまいりました。2022年には、県民サービスの向上・地域社会の活性化を目的として、広島県と包括的連携協定を締結させていただきました。今後も地域に根差した企業として、DXを通じて県民の皆さまの「健やかさ」への貢献を実践してまいります。
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