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インタビュー
はつかいち観光協会/本部統括課長
小松 康伸 (こまつ やすのぶ)さん
AIカメラで顧客属性をデータ化 売り上げ増に
―はつかいち観光協会さまが運営される「はつこいマーケット」(廿日市市)の店内には、「AI(人工知能)カメラ」が設置されています。AIカメラでどのようなデータを取得しているのでしょうか。
 「はつこいマーケット」は、宮島へ渡る前のフェリー乗り場にある宮島口旅客ターミナル1階の物販施設です。廿日市市から委託を受け、地域の魅力を国内外に発信する拠点として2020年7月に運営を開始しています。約100平方メートルの店内には、廿日市産の土産物を中心に600アイテムほどを揃えています。
店内に設置されたAIカメラ
 AIカメラは、フェリー乗り場側の店内出入り口の天井から1台つり下げています。AIカメラが来店者情報を分析し、性別、世代別、新規かリピーターかどうかを判断してデータ化して、レジカウンター内に設置されたモニターへデータを送っています。データは1日分蓄積されますが、1日経つと消えてしまいます。データを長期間蓄積する機能がないため、午後7時に店を閉めた後、1日の来店者数や性別、世代別の合計人数をパソコンに入力し、人数の推移が確認できるようにしています。リピーターの分析などに使用する顔認証データについては、1日で消えず、半年程度は保存されています。
―AIカメラを導入されたいきさつを教えてください。また、実際にAIカメラで取得したデータをどのように活用されていますか。
 売上高や顧客満足度アップを目的として、2021年4月に導入しました。店をオープンした当初は廿日市の商品を中心にどんどん入荷していきました。しかし、入荷してもよく売れる商品と売れない商品があります。商品の改廃を行うために、どういった世代の方がたくさん来店されて、どのような商品にニーズがあるのか、顧客属性を把握する必要がありました。
 データを集計すると、20~30代の女性が一番多く来店されていることが分かりました。パッケージデザインがかわいい商品など、その年代が好む商品を多く仕入れて、商品構成のラインアップに生かしています。お客さまが買い物中に「いろいろ商品があって楽しいね」と話されているのを耳にすることがあります。そういった声は励みになっています。
 20~30代の女性に支持される商品を念頭に置いて、お客さまが興味を持つ商品にするために、パッケージの変更などを出荷者の方々に相談することもあります。パッケージは重要です。どんなにいい商品、おいしい商品であっても、パッケージでうまく伝わらなければ購入につながりません。
店内の様子
―データを活用した具体的な事例があれば教えてください。
 当店の特徴として、もみじまんじゅうはいろいろな味が楽しめる詰め合わせがよく売れる傾向にあります。詰め合わせを作られていないメーカーがあったので、詰め合わせの商品を作り、パッケージも変えた方がいいと提案しました。
 また、食酢を製造、販売されている地元の業者さんが一升瓶に入った酢を出荷されていたので、旅行者が持ち帰りやすいサイズを作った方がいいと勧めました。サイズを変えるとともにパッケージも目を引くデザインに刷新。もみじまんじゅう、食酢とも、商品の見せ方を変えて、それぞれ売り上げが伸びました。
―データ取得のほかにAIカメラの利点はありますか。
 AIカメラは有線放送とつながっていて、取得した情報を店舗で流れるBGMに反映する機能があります。自動でお客さまの年代に合った曲が流れるため、リラックスできる快適な滞在時間を提供することができます。
 また、閉店時の案内放送や、ペット同伴に関する案内放送、私たちが管理しているコインロッカーの施設案内放送など、自動で音声が流れる機能もあり、スタッフの手を煩わさずにすんでいます。
―課題はありますか。また、改良を求めている点があれば教えてください。
 リピーターを実際より多くカウントしてしまったり、動きの速い人は認識できなかったりするなど、AIカメラのデータに誤差があるところです。リピーターのカウント人数が多過ぎると感じて、お客さま一人一人に「ご利用は初めてですか」とヒアリングしたことで分かりました。
 また、AIデータとレジがつながっていないため、実際に売れた物とAIデータの関連付けができていません。他にも、ご夫婦で買い物される場合に男性が選んだ商品であっても女性が購入されるケースもあります。売れた商品は誰が選んだのかはっきり分かるように改良できれば、より分析の精度が上がり、今よりもさらに性別や年代にぴったり合う商品の入荷ができるようになると思います。分析結果を基に、顧客ニーズのある商品構成を行っていきたいです。また、地元の出展者の商品をより魅力のあるものに磨き上げるためにも、分析結果を活かしていきたいと思います。
―どのような店舗を目指されていますか。県民に対してメッセージをお願いします。
 「はつこいマーケット」の店名には、「はつかいちに来て(こい)」と、「はつかいちに恋(こい)してほしい」という意味が込められています。
 AIカメラで集めたデータを基に魅力的な商品を揃えて、宮島口周辺へ遊びに来る観光客だけでなく、廿日市市全域に遊びに来られる方たちがわざわざ足を伸ばして買い物に行きたい、と思っていただける店づくりをしていきたいと思います。
北側から見た店の様子
一般社団法人はつかいち観光協会 ホームページ https://hatsu-navi.jp/
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