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インタビュー
株式会社サンネット/取締役 サービスイノベーション事業部長
保井 雅之(やすい まさゆき)さん
株式会社サンネット/健康相談室 室長
福場 護(ふくば ゆずる)さん
歩数や睡眠データ管理アプリで、社員の健康を後押し
―企業・団体向け健康増進型アプリ「WeRUN健康増進サービス」を導入されています。どのようなサービスですか。
 福場 歩数や心拍数、睡眠時間などを計測できるスマートウォッチと、スマートフォンのアプリを連動させたサービスです。ソフトウェア開発のシング社さま(大阪市)が開発しました。スマートウォッチとスマートフォンを同期させると、計測したデータをアプリに取り込むことができます。データはクラウド上のデータベースに蓄積され、アプリを見れば歩数や歩行距離、消費カロリー、心拍数、睡眠時間などが確認できます。心拍数の推移や眠りの浅さ、深さなどはグラフでも表示されます。過去のデータを含め、自分の記録の移り変わりを確認できますので、運動習慣の見直しに最適です。当社では希望する社員にスマートウォッチを配布し、アプリをダウンロードしてもらっています。2019年に導入し、現在は社員約360人のうち半数以上の約200人が取り組んでいます。
「WeRUN健康増進サービス」のイメージ図
歩数や歩行距離、消費カロリーなどが表示されたアプリ画面
心拍数の推移(左)と睡眠データがグラフで表示されたアプリ画面(右)
―導入された狙いを教えてください。
 福場 ITサービス業である当社は、システムエンジニア(開発系技術者)が約7割を占めます。座ったままパソコンで作業する時間が多く、運動不足に陥りがちでした。そのため、社員の健康維持・増進を会社としても支援したいと「健康経営」の観点から導入を決めました。自分の歩いた歩数や消費カロリーをアプリで「見える化」し、自発的な運動につなげてもらうのが主な目的です。
 アプリでは自分のデータだけでなく、日、週、月ごとに集計された他の社員の歩数ランキングも見ることができます。自分と他人の頑張りを比較できますので、「エレベーターの代わりに階段を使おう」「昼休みに会社周辺を散歩しよう」「家まで歩いて帰ろう」といった意識が社員に生まれているようです。
健康相談室室長の福場さん(写真左)と取締役サービスイノベーション事業部長の保井さん(同右)
社員のモチベーション維持に向け、工夫されていることはありますか。
 福場 「WeRUN健康増進サービス」を利用したイベントを年1回程度開催しています。しまなみ海道や東海道五十三次といった仮想のウォーキングルートを会社が設定し、参加者は歩数の合計をバーチャル上で競います。個人戦と部署ごとのグループ戦で競い、上位入賞者にはアマゾンのギフトカードなどをプレゼントしました。
 2022年には会社創立60周年を記念し、「GPSアート」にも取り組みました。スマートフォンの全地球測位システム(GPS)を活用し、歩いた軌跡で描く絵や文字の完成度を競うイベントです。記念行事ですので全社員を対象に実施し、「WeRUN健康増進サービス」のアプリを使いました。スマートウォッチを持たない社員でもアプリをダウンロードしたスマートフォンを持って歩けばイベントに加わることができます。社員からは神奈川県座間市で作成したゴジラの絵、広島市中区の平和記念公園を中心に描いた「PEACE」の文字など、多くの力作が集まりました。作品の芸術的センスだけでなく、アイデアやネーミング、地域らしさを加味し、上位入賞者にはクオカードを進呈しました。
 イベント期間中は月曜日になると「この週末、どれぐらい歩いた?」「どんな作品をつくっているの?」といった会話が社内で飛び交います。イベントが健康増進だけでなく、社員のコミュニケーションの活性化にも役立っているようです。
しまなみ海道を仮想のウォーキングルートに歩数を競ったイベント時のアプリ画面
「GPSアート」イベントで社員がつくった作品の一例
導入や運用にあたり苦労された点はありますか。
 福場 「WeRUN健康増進サービス」の導入前後で社員の健康増進の効果を直接図ることができないため、導入評価をすることが非常に難しかった点です。データは利用者の個人情報になりますので、クラウド上のデータを会社がエクスポートして分析するにも全員に許可を取る必要があります。スマートウォッチは心拍数や睡眠などのデータを計ることができますが、医療機器ではありませんので、活用にも限度があります。当社としてはあくまで、サービスを使って社員が楽しみながらそれぞれの健康増進につなげてね、というスタンスで運用しています。
 一方、「健康経営」の観点から社内で毎年集計しているデータを見ると、「運動の機会を提供し、生活習慣の改善を図る」の項目が2019年度は19.3%でしたが、2022年度は25.0%までアップしています。もちろん「WeRUN健康増進サービス」だけの結果ではありませんが、社員の生活習慣改善へのきっかけの一つになっているのではないかと推測しています。
 社員がより楽しみながら健康づくりができるよう、社内でアイデアを出しながら今後も「WeRUN健康増進サービス」を活用していきます。

サンネットはITサービス業として数々の実績があります。DX導入支援を行う立場から、現状をどのように見ていますか。
 保井 各種証明書の発行など自治体向け住民情報システム、病院の電子カルテや医事会計システム、企業の販売管理や生産管理システムなど、当社は1962年の設立以来、社会のさまざまな場面で活用されるITサービスを提供しています。行政や医療機関、民間企業を主な顧客に、システムの企画から設計、開発、導入、保守までワンストップで提供できるのがうちの強みです。
 DXに取り組みたいと思っていても、「何をすればよいか」と悩む企業や団体が多いのが現状です。ただ、少子高齢化で労働力人口は減ってきており、ITを活用した業務の効率化は待ったなしの状態です。そこで、地域に根差すIT企業として「DXの未来を広島から。」をスローガンに掲げ、お客さまや社会の未来創造に貢献するDXの担い手となることを目指しています。
どのようなことを進める予定ですか。
 保井 まずは、企業や団体における業務変革の推進です。特に現場に視点をおいて、属人化しない仕組みづくりを提案します。製造業、中でも食品工場を例に挙げると、冷蔵庫や冷凍庫、加工現場などの温度を、スタッフが決まった時間に計測し、紙に記入するといった人頼みの運用がまだまだ多いです。
 そういった企業には、各該当箇所にセンサーを付けて温度を自動で測り、データを管理するシステムを提案します。システムを導入することで、例えば食中毒などの問題が発生したときも、どの段階で異常がおきたのかを、迅速に調査ができ、対処や改善がタイムリーに図れます。こういった現場での散在するアナログな情報をクラウド上にデータとして統合して業務効率化を推進します。
 また、私たちの住む地域には高齢化や過疎化、食品ロスなどさまざまな地域課題があります。しかし、一企業・一団体の努力では、なかなか解決には至りません。
 そこで、行政や医療機関、民間企業それぞれが持つデータを連携させ、地域課題の解決へつながり合う「サンネットDXプラットフォーム」を新たに創造し、地域のサプライチェーンにおける事業変革を促進したいと考えています。現在は、社会課題解決に貢献できる新たなサービスの創造に向けて全社横断でのプロジェクトを立ち上げ、ビジネスデザインの検討を進めている最中です。
 そのプロジェクトが中心となり、地域に根差すプラットフォーマーとして、県民の皆さまが安心、安全、豊かに暮らせる社会の実現を目指します。
「サンネットDXプラットフォーム」の構造図(製造業での活用例)
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