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インタビュー
株式会社広島ドラゴンフライズ/代表取締役社長
浦 伸嘉(うら のぶよし)さん
AIカメラで来場者分析 体験価値高める
―試合に来場したお客さまにより良い体験を提供するため、通信事業を手がけるQTnetさま(福岡市)との共同プロジェクトを2023年6月に立ち上げられたそうですが、どのような取り組みですか。
 来場者の顔をAI(人工知能)カメラに記録させ、属性、年代、メガネや帽子の有無、リピートなどの情報を収集してマーケティングや商品開発に生かす取り組みです。広島サンプラザホール(広島市西区)とエフピコアリーナふくやま(福山市)の会場入り口近くに、体温測定と顔認証が一体的に行うことができる最先端のAIカメラ計4台を設置し、情報を取得しています。23年12月末までを実証期間に設定し、2023-24シーズンのホームゲーム初戦である10月21日の宇都宮ブレックス戦から取り組みを始めました。
プロジェクト発足の記者会見の様子(写真左)とAIカメラ(同右)
―導入の背景や狙いを教えてください。
 将来的なアリーナビジネスを見据え、クラブの価値を高めていくことが重要だと考えています。そのための先行的な取り組みとして導入したのが、AIカメラを活用した顧客分析です。他に実施しているクラブはなく、リーグ全体で初めての試みだと聞いています。始めたばかりでまだデータが少ないため、本格的な分析や施策の立案はこれからですが、数字という確かな根拠を基に販売戦略の策定やイベントの実施ができるので、来場者の体験価値向上に役立つのではないかと期待しています。
 加えて、来場者の安心・安全を担保するという狙いもあります。まだ構想段階ですが、観戦中に問題を起こしたことのある人物などを登録して入場制限を行うことも可能です。セキュリティを強化し、来場者に心行くまでバスケットボールを楽しんでいただきたいと考えています。
―この取り組みにはどのようなDXの技術や仕組みが使われていますか。
 使用しているAIカメラは、QTnetさまとAIスマートカメラ開発のHMS(福岡市)さまの共同開発で、今回のプロジェクトに合わせて作っていただきました。検温と同時に顔認識が始まり、2~3秒で完了します。大きさはスマートフォンと同じくらいで、持ち運びが楽です。情報はQTnetさまのデータベースに蓄積され、数日後、Googleが提供するデータ分析ツール「Looler Studio(ルッカースタジオ)」に反映され、見ることができます。
―23年11月14日時点でホームゲームが5試合ありましたが、どのようなデータが取れましたか。また、それをどのように分析していますか。
 データが届き、分析しているのは10月21、22日にあった宇都宮ブレックスとの2試合です。手始めに見ているのは、入場者数のほか、リピート者数、男女比、年齢層です。女性の割合が高く、男女問わず40~60代中盤のミドル層の来場が多いのが目立つ部分で、これは現場や私が感じている感覚と一致しました。これまではその感覚に頼ってあらゆる手段を講じていましたが、これからは根拠を持って戦略が練れるという実感があります。
 今後の展開はもう少しデータを蓄積させてからになりますが、仮にリピート客が多い場合は、もっと選手やクラブを好きになってもらえるよう、試合終了後のファンクラブ向けイベントの充実を図るといった施策が考えられます。逆に新規が多い場合は、ペアや団体利用で割安になるパック商品をつくって足を運んでいただきやすくするなど、考えられます。
 ただし、どちらか一方だけに注力するわけではありません。両者の満足度アップを図っていく中、来場者の傾向を見える化したことで、どちらの比重を高くするかという判断がしやすくなったと思っています。
フルハウス(満員)の広島サンプラザ(10月22日、宇都宮戦)
現場の社員やお客さまからの反応はどうですか。また、課題に感じていることや改善したことはありますか。
 Bリーグのチケットは、紙か専用のスマートフォンアプリを使った「モバイルIDチケット」の2種類があります。これまでスマートフォンアプリでの入場者(全体の約50%)の名前や性別、住所といった会員登録データしか取れていなかったので、全ての入場者のデータが簡単に取れることに驚いている社員が多かったです。データを見た社員からは「根拠がある分、お客さまやクラブの目指す方向に合った企画がつくれそう」といった声がありました。加えて、「平均値を知るためにも、まだまだデータの量が必要」という意見も出ています。
 AIカメラのスタンドに顔認証をしていることを明示した書面を貼っていますが、それについてなにかご意見をいただいたことは現時点ではありません。ただ、これまで手荷物検査とチケット提示だけだった入場フローに、顔認証が加わったことで入場に少し時間がかかっているのが現状です。カメラの設置場所を工夫するなどして、少しでも待ち時間が少なくなるように試行錯誤をしています。
収集データを映したパソコン
他にもサービス面やチームの運営面でDXを活用している事例や、今後の取り組み予定などがあれば聞かせてください。
 毎年シーズン前に発行しているイヤーブックに、拡張現実(AR)を使った仕掛けを取り入れています。選手を紹介するそれぞれのページに二次元バーコードを載せ、読み込むとスマートフォンの中で選手が動き出します。OnePlanetさま(千葉県)が提供する、画面内の一部にARをつくる場所限定ARコンテンツ制作ツール「LocationAR(ロケーショナー)」で作成しています。
 このほか、LINE(ライン)の公式アカウントも活用しています。Maneqlさま(マネクル、大阪府)が開発した、LINE専用のマーケティングツール「Lステップ」を導入し、性別や年齢、居住地域といった利用者の情報を、アンケートから収集しています。居住地域を知れるのが大きな特徴で、エリアごとの広告展開やイベントの実施に重宝しています。
イヤーブックのAR体験(写真左)と公式LINE内のアンケート(同右)
県民へメッセージをお願いします。
 今シーズンは26年に新設されるBリーグに替わる新たなトップカテゴリー「Bリーグ・プレミア」への参入審査の対象シーズンで、「1試合当たりの平均入場者数4000人以上」を必ず達成しなければなりません。そのために、AIなどの最先端技術を扱うテック企業と協業していきながら、さまざまな企画を実施していきます。「また来たい」と思っていただけるような観戦体験を提供できるよう、力を尽くします。
 また、当クラブは「HIROSHIMA PRIDE」をビジョンに掲げ、「屈しない魂」や「歴史に学び未来を切り開く情熱」を胸に活動をしています。ぜひ会場に足を運んでいただき、熱いバスケットをご体感いただければと思います。
株式会社広島ドラゴンフライズ (https://hiroshimadragonflies.com/)
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