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インタビュー
株式会社コアシステムズ/営業部マネージャー
平松 賢治(ひらまつ けんじ)さん
非営利団体の集金オンライン決済システム開発
―非営利団体向けの「集金オンライン決済システム」を2023年7月から、提供しています。どのようなサービスですか。
 町内会や同窓会、部活のOB・OG会、サークルといった非営利団体の会費などの集金をオンラインでクレジット決済できる国内初のシステムです。集金する側は時間と手間がかかっていた「手集金」から解放され、集金される側も時間や場所に関係なくパソコンやスマートフォンから支払いができます。
 利用団体は当社のホームページなどから申し込んでもらい、団体の名称や集金のための口座を教えていただいたら2、3営業日のうちに、管理画面のURLを送ります。IDとパスワードがあれば、複数のデバイスからログインできます。
 集金担当者が管理画面の「集金情報設定」に「集金の名称」「金額」「期限」を入力すると、二次元バーコードとURLが自動で作成されます。それを貼り付けた案内文をメールやLINE(ライン)で会員に一斉送信し、受け取った側がアクセスすると、情報入力画面に遷移します。電話番号やメールアドレス、クレジットカードの番号などの個人情報を入力した後、決済の最終確認画面で決済ボタンを押せば会費などの支払いを完了できます。とてもシンプルなシステムです。
 また、集金した金額の集計などもシステムを使えば簡単です。管理画面から誰が決済したのか履歴を確認でき、そのデータをダウンロードして保管することもできます。手集金したお金を数えたり、自宅保管したりする手間も省けます。
実際の管理画面。集金情報設定の画面に金額などを入力すると、二次元バーコードが作成される
―システムを開発した経緯を教えてください。
 お客さまとの会話がきっかけでした。町内会などの地域の任意団体が会費を集める場合は、会員宅を訪問して集金する手集金がほとんどです。最近は核家族化が進み、日中は不在の共働き家庭も多いため、集める役員は週末の訪問が欠かせません。在宅であっても、キャッシュレス化が進んで小銭を持ち合わせていない人もいます。さらに、集めたお金を自宅で一時的に保管しなくてはならず、集金係は心身共にストレスを抱えることになります。また、同窓会や部活のOB・OG会の場合はメンバーが全国に散らばっており、会費や寄付金を振り込んでもらうための振込用紙を会員宅に郵送するケースがほとんどでしょう。会員は勤務中に銀行やATMに出向かなければならない上、金融機関の手数料も上乗せされるため、支払いがおっくうになりがちで、集金率は高くないと聞きます。
 私も町内会の会費を集めた経験がありますが、役員の負担が大きいと参加や活動にも消極的になり、担い手不足につながると思います。結果的には組織の存続問題にも発展していくのではないでしょうか。少しでも手間を減らして、地域コミュニティーの支援につながればと考えました。
「集金オンライン決済システムが、地域コミュニティーの活性化に貢献できたら」と話す平松さん

どのように仕組みを構築したのですか。
 当社は1998年、自動券売機や上映案内、売り上げの管理などを含めた映画館のシステムをパッケージとして国内で初めて開発しました。インターネットで座席を予約してチケット料金をクレジット決済できる機能も追加し、現在では全国の100カ所以上の映画館にステム提供しています。決済の件数は23年だけで400万件、金額にして31億円にも上ります。その仕組みを応用して、非営利団体のためのクレジット決済のシステムを企画・開発できないかと考えました。
 しかし、クレジットカード会社と加盟店契約をする団体は小売店などの商用に限られており、初めてクレジットカード会社に相談した際には、「非営利団体との契約は前例がない」との意見をいただきました。非営利団体の場合は、町内会なら「町内会長」といった責任者の交代も頻繁で責任の所在も不明瞭なためです。半年ほどの間、問題をクリアするための方法を何度も提案し、検討していただいて、当社がクレジットカード会社と直接加盟店契約を結ぶことで解決しました。利用者がクレジット決済したお金はカード会社を通じていったん当社に入り、当社からシステムを使用した団体の口座に振り込む仕組みにしました。
会費などを支払う側の画面。個人情報を入力した後、決済画面に移る。手数料も自動で計算される
利用料はどの程度でしょうか。
 町内会などの会費の集金は年に1、2回なのが一般的です。利用しない月にも固定費が発生すると導入のハードルが高くなると考え、システムを使って決済していただくごとに、手数料をいただくスタイルにしています。決済金額の3%に加え、1決済当たり50円をいただいています。例えば、集金する会費が1人当たり4800円なら手数料は194円になります。手数料の負担を団体か個々の会員かのどちらにするのか、選べるようにしています。
どのような団体が利用していますか。
 北は東北、南は九州まで、数十の団体に利用していただいています。一番多いのが、高校や大学の部活のOB・OG会です。毎年の年会費だけでなく、現役の後輩たちのための寄付金集めに活用してもらっています。他にも自治会・町内会や中高校の同窓会、青年会議所、趣味のサークル、アーティストの私設ファンクラブなど、システムのサービス開始から半年の間で多種多様な団体が役立ててくださっています。初めてのお客さまにはオンラインなどで10分ほど使い方をお伝えしていますが、難しい操作も必要なく、すぐ利用できる手軽さは好評のようです。
 シンプルなシステムでも、それぞれの団体が使い方を工夫していてこちらが学ぶことも少なくありません。ある同窓会では、母校の周年記念に合わせて校舎など施設の整備のための寄付金集めにシステムを利用しています。決済ページにつながる二次元バーコードを付けたチラシやポスターを作成して、集金をスムーズに進めています。また、埼玉県内のある自治体から、100以上もある自治会に活用を勧めたいと連絡をくださったこともありました。
県民に向けてメッセージをお願いします。
 地域の特性や団体の年齢層によっては、クレジット決済に抵抗感を抱いたり、デジタルによる効率化にピンと来なかったりすることもあるように思います。とはいえ、システムを使ってみて半数の方がクレジット決済をしてくれるだけでも負担が減ります。最初はそんなところからのスタートでも、いいのではないかと感じています。
 実際に利用していただいた団体から話を聞いたり、活用の方法を教えてもらったりしていると集金方法や頻度、金額も多彩であることが分かりました。走り続けていく中で、お客さまと工夫しながらより良いシステムに育てていきたいと考えています。地域コミュニティーがデジタルトランスフォーメーション(DX)化を進め、効率的な運営を実現することができれば、当社の地域貢献につながると考えています。このシステムをより多くの県民の方に知っていただいて、皆さんの身近な団体の負担を少しでも軽くしていただけたらうれしいです。
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