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インタビュー
クオールホールディングス株式会社  DX・AI推進室長 
樫尾 浩幸(かしお ひろゆき)さん

LINE活用 処方箋予約やお薬手帳サービス


―広島県内の21店舗をはじめ保険薬局を全国に展開する中、無料通信アプリLINE(ライン)を活用した処方箋送信サービスを2022年4月に導入されたそうですが、どのようなサービスですか。
 LINEのプラットフォームを活用して、患者さまに薬局を便利に利用していただくためのサービスです。薬の受け取りにかかる待ち時間の短縮が主な狙いです。
使い方はまず、クオールの公式LINEを友だち登録してもらいます。次にトーク画面のメニューから「処方箋LINEで予約」をタップしてご希望の薬局を選んだら、お手元の処方箋画像をスマートフォンで撮影し、送信するだけです。薬の準備ができたらLINEでお知らせしますので、薬局で長時間待つ必要がありません。
 アフターフォローも充実しています。患者さまが服薬を始めてから数日後、体調の変化やお困りごとがないかをLINEを通じて薬剤師が尋ねます。服薬の方法やタイミング、体調に関する質問など、何でも受け付けています。24時間いつでもご都合のよい時間に返信していただければ、薬剤師がお答えします。
LINEのトーク画面
LINE処方箋事前送信の画面
―処方箋を送る以外にも、便利なサービスがあるようですね。
 処方箋送信後に、薬の内容が自動登録される「お薬手帳サービス」を備えています。家族情報を3人まで登録できますので、最大3人のお薬手帳を管理できます。
 オンラインでの服薬指導にも対応しています。生活習慣病の方など、普段から飲んでいるお薬がある方は、オンライン診療と併用して、非接触でお薬を受け取ることができます。病院から直接クオールに処方箋を送ってもらい、LINEのビデオ通話を活用したオンラインの服薬指導を受けていただければ、薬局まで出向く手間が省けます。支払いはキャッシュレス決済に対応しており、お薬は、宅配業者を通じて患者さまのご自宅までお届けします(配送料は別途必要)。
 薬局での滞在時間をさらに減らすため23年6月から、東京の一部店舗で試験的に処方箋医薬品のモバイルオーダーを始めました。LINEでの処方箋送付、服薬指導から決済まで全てオンラインで完結します。薬局では薬を受け取るだけ。順次、全国の店舗に展開する予定です。
画面越しにオンラインで服薬指導する薬剤師
LINEを活用した処方箋送信サービスを導入した背景を教えてください。
 LINEの導入以前は、処方箋送信サービスのあるスマートフォンの専用アプリを使っていました。ところが薬局の利用は高齢者が多く、アプリをインストールするだけでもハードルが高く普及が進んでいませんでした。その点LINEはご家族やお友だちとのコミュニケーションツールとして既に使われている方が多く、操作も慣れてらっしゃいます。クオールと友だち登録をするだけで簡単に利用できますので、まさにうってつけだと感じました。
 ただLINE社にデータが渡るのではないか、との不安はありました。処方箋は病院名や薬名、服薬量などが記載され、情報の取り扱いには慎重にならなければなりません。そこで、LINEはプラットフォームとして使うもののデータの保持・管理は自社で行うアイデアを思いつき、2021年からMG-DX社(サイバーエージェント100%子会社、東京)との共同開発に着手。22年4月のサービス開始に至りました。
運用にあたり苦労した点はありますか。
 LINE登録やスマートフォン操作の対応のために、薬局のスタッフに負担をかけてしまうことがありました。そのため23年9月から、読み取るだけでLINE登録ができるICチップ入りのシールを一部店舗に取り入れました。このチップはNFC(近距離無線通信)タグと呼ばれ、スマートフォンをシールにかざすだけでLINEが立ち上がり、友だち登録までできる優れものです。効果を確認できたら他の店舗にも広げ、スタッフの負担軽減につなげたいと考えます。
処方箋送信サービスの利用状況はいかがですか。
 サービス開始から現在まで約20万人に活用してもらっています。利用した方からは「LINEは元々使っていたので、友だち登録するだけでサービスが使えて簡単だった」「お薬を受け取るまで長時間待たなくていい」「子どものお薬手帳を全て把握できるので管理しやすい」「LINEで気軽に相談できて心強い」といった声が届いています。
 患者さまの声の中に「家族情報の登録人数を増やしてほしい」との要望がありました。子どもだけでなく、両親分などのお薬手帳を管理したい、とのことです。こちらは準備ができ次第、対応する予定です。来年をめどに、マイナポータルと連携し、他の薬局で処方されたものを含む薬剤情報や、特定健診情報などを取り込めるよう改良する予定です。これからも患者さまや現場の薬剤師の意見を取り入れながら、より使いやすいサービスに発展させていきたいと考えています。
そのほかの取り組みとして22年2月、江田島市で小型無人機ドローンを使った患者への医薬品配送の実証実験を実施されていますが、取り組み内容を教えてください。
 島の病院おおたに(江田島市能美町)さまの協力の下、オンライン診療を受けた患者さまにドローンで処方薬を届けました。医師がビデオ通話で診療して発行した処方箋を基に、クオールの薬剤師がオンラインで服薬指導を実施。その後、薬を入れた保冷ボックスを病院近くの長瀬海水浴場から、患者さまの自宅に近い高祖多目的集会所までドローンを使って空中配送しました。薬は待機していた薬剤師が患者さまの自宅まで届けました。ダミーではなく、実際の患者さまに本物の薬をお届けした実証実験です。
江田島市で行われた実証実験で、処方薬を載せたドローン
処方薬を載せ、江田島市の上空を飛ぶドローン
 ドローンを使った江田島市での医薬品配送の実証実験を紹介したクオールの公式動画 https://youtu.be/SaFjR6BF3KE
実証実験に至った経緯を聞かせていただけますか。
 もともとは、創業者であるクオールホールディングス㈱会長の中村勝の「医薬品を患者さまのお手元に届ける手段として、ドローンの技術を研究してほしい」との指示から企画は始まりました。実証の場を探す中、気候が比較的穏やかな瀬戸内海の島々ならドローンでもいけるのではないかと、クオール薬局を展開する江田島市の店舗にヒアリング。すると江田島市高祖地区は2018年の西日本豪雨で幹線道路が寸断され、薬局まで90分も歩いて来られたご高齢の患者さまがいらっしゃったとの情報を聞き、実証実験の場に決まりました。
 飛行ルートのチェックや関係各所との調整など、準備は13カ月に及びました。江田島市役所や内能美漁業協同組合の皆さまをはじめ多くの方々のご協力の下、実証実験は大成功しました。高額なドローン本体のコストや、見守りのための人件費がかさむなど、事業化には解決しなければならない課題が多くあります。ただ、今回の飛行航路は国土交通省からレベル3飛行で認可が下りていますので、万が一の際は同じ航路でドローンを活用することはできます。
 江田島市の成功を受け22年3月には愛媛県今治市の離島、来島でも医薬品配送の実証実験を実施しました。24年には買い物弱者への対策を兼ね、高知県黒潮町の山間部で医薬品と日用品を混載したドローンの配送実証実験を行う予定です。実証実験で得られた知見を生かしながら、災害時や過疎地域で通院が難しい患者さまの負担軽減につながるよう実用化を進めます。

DXを推進する意義など、県民に向けてメッセージをお願いします。
 コロナ禍を契機に、非接触・非対面の一定の流れが生まれました。料理宅配サービス「ウーバーイーツ」の発展はその象徴でしょう。ところが医療の受診や服薬指導、薬のお届けはいまだに対面が大多数となっています。デジタルの活用でより手軽に、かつ迅速安全に医療が受けられるよう、医療の分野でもDXは必須であり必然です。
 クオールグループのスローガンは「あなたの、いちばん近くにある安心」です。広島県民の皆さまが病気やけがでお困りの時、居住地や年齢、性別、障がいの有無に関係なく、医療やお薬を確実にお届けするため、DXを進めながらより一層の努力をしてまいります。

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