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インタビュー
積水ハウス株式会社/広島支店 支店長
佐々木 望(ささき のぞむ)さん
VRで戸建て提案 ミスマッチ防ぎ理想の住まいを
―新築一戸建て住宅の提案にVR(仮想現実)技術を活用されています。どんなサービスですか。また、どのようにして映像を見るのでしょうか。
 お客さまそれぞれの設計プランに応じた、VR対応の3Dパノラマ画像を作成するサービスです。これまで伝えづらかった広いリビングや吹き抜け空間、大開口部の雰囲気、木質仕上げの質感などを、360度3Dで体験していただけます。
 作成した画像は、来店時にパソコンをつないだモニター画面でご覧いただけるほか、二次元バーコードを通じてお客さまのスマートフォンからもご覧いただけます。さらに、紙でできたVR用ゴーグルをお客さまにプレゼントしています。ゴーグルにスマートフォンをセットすることで、没入感のあるVR体験もできます。


VR用ゴーグルと装着イメージ
―サービス導入の狙いを教えてください。また、いつごろから構想があり、いつ開始しましたか。
 設計図からのイメージと実物とのミスマッチをなくすのが導入の目的です。これまで提案に使用してきた独自のCGシステム「CG3S」で作った画像は、画質が粗く木目などが鮮明に表現できないことや、画像の作成までに時間がかかり、スピード感のある提案ができないという課題がありました。さらに、画像をVRデータに変換できないため、他社に後れを取らないかという懸念もありました。それらを解消しようと、2017年初頭からVR導入の取り組みが始まり、同年12月からサービスの提供を始めました。


―このサービスにはどのようなDXの技術や仕組みが使われていますか。
 Chaos SoftWare社(ブルガリア)の3DCGプログラム「V-Ray」を使ってVR画像を作成しています。当社独自のCADシステム「SIDECS(シーデックス)」で作成したCADデータを、「CG3S」でCG化します。それを社内の「V-Ray」の専用サーバーにアップすると、3次元オブジェクトや光源の情報から3DCGを描画するレンダリング・ライティング処理が自動で行われ、VR画像が完成します。完成すると自動メールで依頼者に通知が届き、その中にURLや二次元バーコードが同封されています。
 特長は画質の良さで、従来のCG画像よりも飛躍的に向上しました。ただし、一部の建物や外構要素では画質が陳腐なものもあるため、高品質なオブジェクトに置き換えるなどして、対応しています。お客さまに見ていただくときは、krpano Gesellschaft mbH社(オーストリア)のウェブサイト上でパノラマ画像を表示させる高性能フラッシュプレーヤー「krpano(ケーアールパノ)」を利用しています。専用のアプリケーションをダウンロードする必要もなく、インターネットを通じて閲覧できるので、導入のわずらわしさもありません。
 VR画像は当社のウェブサイトでサンプルを無料公開しています。木造住宅シャーウッド「GRAVIS STAGE」や鉄骨住宅の旗艦モデル「IS ROY+E(イズ・ロイエ)」など、計5種類を見ていただくことができます。
※)V-Rayは、 Chaos Software社の商標です。
VR画像とサンプルが見られるページ
お客さまにはどのようなメリットがありますか。
 「イメージがわかない」。この言葉が住宅業界で最も怖いフレーズです。VR画像を使ったサービスを受けたお客さまからは、「CGよりもイメージしやすい」「奥行きがあるので、空間として見られてワクワクする」「気になった部分や変更点を伝えやすい」など、多くの声をいただいています。イメージとのミスマッチを未然に防ぐことで、お客さまの安心感や納得感、さらには満足感につながっています。
 また、スマートフォンがあればいつでもどこでも提案内容を確認できるのもメリットです。遠方に住むご両親やお子さまなどにURLや二次元バーコードを送ることで、住まいづくりの共有化ができます。
利用状況や社員の反応はいかかでしょうか。
 年間千件以上の住宅提案をする中で、VR画像の使用率は100%です。他社との差異化を図るために、初回の提案時から使用するケースが多く、作成は事務系の社員が担当しています。業務的に良くなったのは、専用サーバーにアップしてから最短1時間程度で画像ができるスピード感です。社員からは「タイムリーな提案につながっている」という反応に加え、「平面では伝えづらい空間が具現化されているので、より細かなところまで正確にニーズをくみ取ることができるようになった」という声も上がっています。
ほかにもDXを活用しているサービスはありますか。また、県民へのPRやメッセージをお願いします。
 当社は「人生100年時代の幸せ」をコンセプトに、これまで培ってきた技術を幸せにつなげる取り組みに挑戦しています。一つが、家をプラットフォームと捉え、さまざまな生活サービスを通じて幸せをアシストする「プラットフォームハウス構想」です。
 その第1弾として21年8月、外出先からスマートフォンのアプリを通じて住宅設備の遠隔操作ができるスマートホームサービス「プラットフォームハウスタッチ」の販売を始めました。間取り図と連動して直感的に操作・確認できるのが最大の特徴で、照明やエアコンなどのオンオフの切り替えのほか、窓やドアの開閉状況、家族の玄関ドアの開閉操作などを外出先から確認することができます。
 さらに、当社は創業以来、安全性や快適性を追求してきましたが、20年から“「わが家」を世界一幸せな場所にする”というグローバルビジョンを掲げ、住まい手の「幸せ」を実現する家造りへのアップデートを図っています。
 時間の経過と共に愛着が増していくような家造りをしようと23年6月、お客さま一人一人の感性をデザインに反映させる、専用アプリを使った新たなデザイン提案システム「life knit design(ライフニットデザイン)」を導入しました。お客さまには、表示される部屋の画像に対して「好み」「好みでない」など、さまざまな設問に回答していただきます。その傾向から、好みの素材や形状、色彩などを営業・設計担当者が読み解き、提案に組み込みます。
 広島県内では、広島市安佐南区と福山市でショールーム「life knit atelier(ライフニットアトリエ)」を展開し、新たなデザイン提案を体感していただけます。今後もデジタル技術を駆使しながら、お客さまの夢や幸せを実現できる住まいを造り続けます。
「プラットフォームハウスタッチ」と「life knit design」の専用アプリの画面
・プラットフォームハウス
・life knit design
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