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インタビュー
青山商事株式会社/営業部長
鈴子 昌規(すずこ まさき)さん
「デジタル・ラボ」 全店で在庫共有し販売
―ネットとリアル店舗の融合システム「デジタル・ラボ」はどういったサービスでしょうか。
 デジタル・ラボ(デジラボ)はスーツ販売店「洋服の青山」全店とオンラインストアの在庫を共有するシステムで、在庫があれば店舗にない商品でもその場で購入できるサービスです。
 店内には専用のタッチパネル式サイネージがあり、来店したお客さまは、必要があればその場で採寸し、そのデータを基にスタッフと共にデジラボのサイトにアクセスします。操作は簡単なので、慣れればお客さまご自身でもできます。サイネージで商品を選び、色やサイズを指定。店舗で購入する流れです。現金でもカードでも支払い可能です。デジラボで選んだ商品と、店舗で選んだ商品を合わせてセットセールに適用もできます。また、購入金額が税込み4290円以上で配送無料になります。
 デジラボには商品を検索する機能の他に画面上でスーツやネクタイなどのコーディネートができる機能や人気の商品をランキング形式で表示する機能などもあります。
見やすく、タッチパネル式の大型サイネージ
「デジラボ」を開発・導入した狙いを教えてください。またスタートはいつでしょうか。
 弊社のお客さまはこれまで、自家用車で来店する方が中心だったため、郊外へ積極的に出店していました。広い売り場に大量の商品を展開することが、お客さまの満足度向上につながっていましたが、近年は交通インフラの発展や若者を中心とした車離れなどを背景に、出店計画を駅前など街の中心部へシフト。それに伴い売り場を従来の200坪前後から、50~100坪にまで縮小しました。ただ、お客さまの満足度を下げないよう、提案できる商品在庫を維持するために開発したのが、デジラボです。
 デジラボは2016年に売り場面積50坪の店舗を秋葉原(東京)でスタートしました。広島県内では20年に紙屋町店(広島市中区)に初めて導入。県内では現在10店舗(西条店、尾道店、広島海田店、呉店、広島緑井店、広島出汐店、紙屋町店、広島庚午店、福山御幸店、福山本店)に設置しています。全国では23年7月末時点で271店舗に導入しています。今後も拡大させ、全店舗での展開を目指しています。


大型サイネージを使って接客する「洋服の青山 福山本店」上級店長 佐々木雅紀さん
デジラボはどのようなDXの技術・仕組みなのでしょうか。
 全店とオンラインストアの在庫をデータベースに入力して管理する仕組みです。デジラボでの購入履歴はもちろん、ECサイトに会員登録されている場合は、採寸データやこれまでの購入履歴を合わせて表示するなどデータをリンクさせています。これからも改修を重ね、さらにピンポイントなサービスを提供できるようにしていきたいと考えています。
 デジラボを活用した購入は、ECサイトの疑似体験になります。デジタルに不慣れなシニア層のお客さまも、スタッフと一緒にサイネージを活用して商品を検索したり、ECサイトについて説明させていただいたりすることで、お客さまが1人でデジラボやECサイトを活用していただくことを目指しています。そのために、システムの操作性を高めるなど随時、改修を行うなど、お客さまの利便性の向上を図りたいと考えています。


デジラボによって、お客さまやスタッフはどのようなメリットがありますか。
 「商品は気に入ったが自分に合うサイズ、好きな色の在庫がない」「荷物が多くなると持って帰るのが大変」など、買い物で感じるストレスが軽減されます。特に店舗在庫が少ないサイズなどは、お客さまの選択肢も限られてきますが、デジラボを活用することで選択肢が広がるため、ご好評をいただいております。都市部でトレンドとなっている商品やプロ野球やJリーグのオフィシャルスーツなど、その地域の店舗のみの取り扱いアイテムなども広島にいながら購入できるのもメリットです。
 デジラボは自宅への配送となりますので、特に公共交通機関を利用して通勤されている会社員や、学校帰りの学生から「便利で助かる」といった反響を多くいただいています。自家用車利用のお客さまからも、お直しした商品の引き取りのため、遠方から再度来店する必要がない配送システムが喜ばれています。
 また、支払いは店舗で行うため、各地域の復興券などECサイトで取り扱いがない決済方法が利用できます。
 現場スタッフにおいてもメリットはあります。売り場が小さく、店頭商品が少ないことで少人数での営業が可能になります。加えて商品のお直しやお客さまへのお引き渡し、商品仕入れなどがなくなることで店舗業務が軽減され、接客やサービスといった、お客さまに向き合う時間が多くなるというメリットがあります。
スタッフは顧客の購入履歴などの情報もタブレットで共有
初期導入時や運用で苦労した点や今後の導入拡大についてはいかがですか。また、ほかにもデジタルを活用しているサービスはありますか。 
 苦労したのは主に新しい接客スタイルと端末操作のスタッフ教育です。これまでは店頭商品のみの接客スタイルでしたので、サイネージで検索し、提案していくスタイルに移行するのに少し戸惑いもあったように思います。
 導入に際しては、運用マニュアルを作り、サイネージの操作や新たな接客スタイルなどを導入店でレクチャー。店では店長が中心となりスタッフ全員を教育し、日々の販売を通じて覚えていきました。最近は導入済み店舗が増えてきたため、導入レクチャーはウェブで実施するケースもあります。導入済みの店舗から教えに行ったり、逆に教わりに行ったりするなどのサポート体制も強化しています。また、導入1~2カ月後に「フォローアップ研修」を行い、導入店は現場の課題や要望などについて報告し、その内容を全店で共有しながら改善に役立てています。
 今後については、数年以内に全店に導入し、どの店舗でもこの利便性を体感していただきたいと考えています。
 そのほかでは、ECサイトのサービスとして、「店舗取り置き」「試着予約」があります。店舗取り置きは、サイト上で検索した商品に対して店頭在庫を確認でき、サイト上で該当店舗に取り置きをして、実物を確認していただけるサービスです。試着予約は、サイト上で気になる商品をご希望の店舗に取り寄せ、実物をご試着いただけるサービスです。いずれも実物を見てからご購入の判断をしていただけるサービスで、洋服の青山福山本店ではこれらの利用が増えています。
県民に対して、PRなどメッセージをお願いします。
 お客さまがスマートフォンなどを使ってもっと簡単で手軽にショッピングができる社会の構築に向け尽力していきます。洋服の青山は広島県福山市に本社を置く地元企業。来年は創業60年を迎えます。47都道府県全てに店舗を出店している「業界ナンバーワン企業」として、これからもデジラボをはじめとする新たな取り組みを積極的に展開し、広島の活力を全国に発信することで、業界全体を盛り上げていきます。ご期待ください。
鈴子営業部長㊧と佐々木上級店長
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