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インタビュー
広島綜合警備保障株式会社(ALSOKグループ)/機械警備・施設管理事業本部長 常務取締役
菊田 和秀(きくた かずひで)さん
ICタグで地域の見守りネットを構築
―見守り用端末「みまもりタグ」を使ったサービスの内容や仕組み、狙いを教えてください。
 近距離無線通信「Bluetooth(ブルートゥース)」を生かし、外出した高齢者や子どもなど、離れた家族の安否を確認するための見守りサービスです。タグは縦5.6㌢、横2.9㌢、厚さ1.1㌢、重さ14㌘の小型軽量で、ブルートゥースの電波を常時発信します。見守りサービスはこのタグと、電波を受信する感知設備と位置情報を入手するための専用アプリの三つで構成されます。
 まず、タグを鞄や専用の靴に入れて外出し、広島県内各所に設置した感知設備や、専用アプリ(無料)をインストールしたスマートフォンを持つ人の傍を通り過ぎると、ブルートゥースの電波を受信し、位置情報が自動的に当社のサーバーに送られます。保護者や家族はスマートフォン専用アプリやウェブサイトを通じて対象者の位置情報の履歴を確認できるため、対象者の外出が早期に分かり、捜索の手がかりになります。
 大きな特長は、感知設備を置く場所や専用アプリをスマートフォンにダウンロードする人が増えるほど、位置情報の収集範囲が広がり、早期発見しやすくなる点です。感知設備を対象者の自宅に加え、福祉施設や公共施設に設置したり、対象者の家族だけでなく、知人や地域の民生委員、PTAや町内会の会員、一般住民などがボランティアの一環で専用アプリをダウンロードしたりすることで、地域の見守りネットワークの構築につなげるのが狙いです。
常時電波を発信するみまもりタグ(写真左)と感知設備(同右)
どんなきっかけで開発が始まりましたか。販売までのプロセスも教えてください。
 2015年頃、当グループの介護施設で入居者の抜け出しや徘徊(はいかい)が問題となり、何か対策ができないかと検討が始まりました。入居者に衛星利用測位システム(GPS)端末を携帯してもらう方法もありますが、毎日充電する必要があり、特に認知症患者の場合は外出時にGPSを所持してもらうのは難しいと判断し、ブルートゥース端末の活用に行き着きました。開発したタグは小型軽量で装着しやすい上、市販のボタン形電池を使用するため、充電の手間はなく、少なくとも1年間は交換する必要はありません。タグは1個2420円で、利用料は一人当たり月額275円と経済的な負担が軽い点もメリットです。
 全国で年間約1万2200人の高齢者が行方不明となる中で、捜索を支援するには地域ぐるみの取り組みが不可欠と考え、タグの開発段階から自治体と連携した活動を模索していました。16年には国土交通省のモデル事業に選定され、茨城県笠間市や埼玉県さいたま市など全国10の自治体と連携し、タグや感知設備、専用アプリを使った高齢者徘徊対策の実証実験を行いました。行方不明となる恐れのある高齢者にタグを貸与し、地域住民や事業者に呼び掛け、専用アプリのインストールをしてもらった結果、実際に行方不明になった高齢者が数時間〜半日後に発見されるといった成果も得られました(ある研究では65〜74歳の行方不明者が発見されるまでにかかった平均時間は16.5時間)。こうした取り組みを進めるうち、実証実験地域以外の人からも利用したいとの声が高まったことから17年、広島県を含む全国でタグなどの一般販売を開始しました。
特にこだわった点や苦労した点は何でしょう。
 通常のブルートゥースの電波の飛距離は10㍍程度ですが、タグの開発に当たっては広い範囲の位置情報を得るため、40、50㍍まで延びるよう技術的な工夫を施しました。また、車は移動範囲が広く、見守り資源として有効なことから、車内の運転者や同乗者がスマートフォンに専用アプリをダウンロードしている場合、高齢者などが車とすれ違った際にも電波を拾えるよう、0.5秒に1回電波を発信する仕組み(通常の発信頻度は1秒)にしました。先に触れた実証実験では、タクシーや宅配のドライバーにも協力してもらい、運転中でも電波を拾えることを確認しています。
 苦心したのは、感知設備の増設です。発売当初はこうしたインフラ設備がほとんどなかったことから、タグの販売はなかなか伸びませんでした。県内の自治体や当社と取り引きのある事業所を訪問し、サービスの内容や地域の見守りネットワーク構築の必要性をアピールすることで、認知度の向上を図り、利用を促進しました。


タグを持った人とすれ違うと電波を受信し、自動的に位置情報(匿名)をALSOKのサーバーに送信する専用アプリ
利用状況や反響を教えてください。現状の課題はありますか。
 広島県内では契約いただいた個人のお客さまの住宅を中心とし、福祉施設など約250カ所に感知設備を設けています。感知設備は住宅の玄関や介護施設の出入り口に設置する場合が多く、タグを持った人の外出時や帰宅時に通過すると、保護者や施設スタッフなどにメールで知らせます。お客さまからは「80代の父親の居場所が把握できるので安心」「タグは小さくて、キーホルダーのように鞄に付けられるので便利」といった声をいただいています。社会福祉協議会のある職員からは「徘徊が発生した際、これまでなら家族の方に電話して『いつ出て行ったのか?』『行き先に心当たりはあるか?』と問い合わせるしか方法はなく、手間がかかった。しかしこのサービスを活用すればより早く正確に捜索できる」と喜ばれています。
 一方で、課題は、専用アプリをインストールしている方はまだ少なく、ダウンロードしていただける人をどう増やすかです。そこで当社では、ダウンロードを通じ、地域の見守りネットワークづくりに貢献できることを告知するチラシを作成し、自治体やバス会社、タクシー会社をはじめとする事業者などに配布し、啓発に努めています。
ボランティアとして専用アプリをダウンロードする人が増えるほど、地域の見守りネットワークが充実するシステム
普及拡大のために何に力を入れていますか。 
 高齢者はもちろん、子育て世帯の多い地域で当サービスの効果を体験していただける機会を増やすことで普及を図ろうと考えています。その一環として23年2月から1カ月間、広島市佐伯区の小学校でタグを使って児童の登下校の状況を見守るサービスの実証実験を行いました。実験は低学年児童17人が参加し、タグをランドセルなどに入れて登下校してもらいました。感知設備は学校のげた箱に置き、通学路に立つPTAや町内会のメンバーら約60人が専用アプリをダウンロードし、児童の位置情報を保護者に送信する環境を整えました。参加者からは「仕事の都合で子どもたちより先に出勤することが多いので、無事登校したことが分かって助かった」「わが子を一人で登下校させる不安の解消につながった」と好評でした。共働き世帯が増える中、今後も各地の小学校を中心に実証実験を呼び掛けていく方針です。
 さらに、自治体へのPRや提案にもこれまで以上に積極的に取り組んでおり、23年8月に大竹市が大竹駅に感知設備を置き、タグを希望者に貸与するサービスを始めました。効果を検証しながら、設備を充実させていく方針です。まず、エリアを絞り込んだ上で感知設備を増やし、徐々に周辺へと見守りネットワークを拡張していきたいと考えています。
DXを生かした他の見守りサービスはありますか。
 当社ではこのほか、高齢者用の緊急通報・相談サービス「HOME ALSOK みまもりサポート」も提供しています。自宅に専用のコントローラーを設置し、「緊急」のボタンを押せば、ガードマンが駆け付けます。さらに、トイレの入り口にセンサーを取り付け、一定時間反応しない場合や、キッチンに付けたセンサーが火災や煙、ガスを感知した場合は自動的にガードマンが駆け付ける仕組みです。加えて、「相談」のボタンを押せば、24時間対応のALSOKヘルスケアセンターにつながり、健康に関するさまざまな相談ができます。このサービスは全国の自治体での導入が増えており、広島県では22年に三原市が30台購入し、市が運営する高齢者向けの賃貸住宅で利用されています。コントローラーは、みまもりタグの感知設備としても利用できるため、併用することで見守りの効果はさらに高まります。
県民へのメッセージをお願いします。
 今後も自治体や教育機関と連携しながら、こうしたサービスの普及拡大を図ることで、子どもから高齢者まで、住み慣れた地域で安心して暮らせる環境づくりに寄与していきたいと考えています。タグや専用アプリを使った見守りは、地域の人々が助け合い、支え合う「共助」のネットワークづくりに資すると信じています。より確かで緊密な見守りネットワークを構築するためにも、一人でも多くの県民の皆さんに専用アプリをダウンロードしていただけるよう、お願いします。
※専用アプリのダウンロードサイト



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