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インタビュー
一般社団法人ITADAKI/代表理事
豊饒 光邦(ぶにゅう みつくに)さん
街の観光×スポーツイベント 
アプリ「シティロゲ®」で地域活性化
―「シティロゲイニング」とはどのようなイベント(競技)なのでしょうか。
 山野に設定されたチェックポイントを回り、制限時間内に獲得する得点を競う「ロゲイニング」がベースです。プレーする場所を街中に移し、観光要素やゲーム性を持たせたのが「シティロゲイニング」。GPS連動アプリ「シティロゲ®」をあらかじめスマートフォンやタブレットにダウンロードしておきます。主催者が公開設定すると、アプリ上でマップが閲覧可能になり、参加者はポイントがマッピングされた紙の地図とアプリを使って作戦を立てます。1~5人1組で一斉にスタートし、定められたエリア(おおよそ8キロ四方)内を回ります。ベビーカーを押しながらでも、車いすを利用される方でも参加できます。
アプリとマップを使って、チームで戦略を練る。高得点を狙うには、ルート選びが重要
 エリア内には50~60のポイントを設置していて、その場所に近づくと、アプリが振動と音で知らせます。その場で画面をタップすることでポイントが加算される仕組みです。観光要素やクイズも盛り込んであるので、巡るだけでその街を知ることができる、まさに「スポーツ×観光」イベントです。ゴールするとアプリが自動集計するので、ポイント計算に人手がいらず、時間もとられません。
 2020年に呉市で初開催して以来、廿日市市の宮島や広島市、岡山県、山口県、神戸市、香川県などで開催してきました。自治体から、「地域活性化のために開催したい」という依頼があるほか、旅行会社から「修学旅行の学びの時間にしたい」と相談があったり、企業からレクリエーションとして取り入れたいと言われたり。シティロゲイニングは、軸とする「地域活性化」に加え、チームワークの醸成や、チームビルディングにも役立っていると実感しています。
「シティロゲイニング」を考案した背景や狙いを教えてください。
 当社は中国エリアを中心に、トレイルランニングやマラソンなど、アウトドアスポーツイベントの企画・運営で地域活性化のサポートを業務としていました。しかし、新型コロナウイルス感染症が拡大すると、年間20以上開催してきた大会が一切開催できなくなったのです。当然、街の活気も失われました。
 そこで「密にならずに地域活性化はできないか」と考え、それまでの経験から「ロゲイニングの手法を用いた分散型マラソンができないか」と思いついたのです。ただマラソンがしたいだけなら、山野を舞台にしたロゲイニングでよかったのですが、「スポーツで地域活性化」が念頭にあったからこそのアイデアでした。街をフィールドにするシティロゲイニングなら、多くのプレーヤーが訪れ、地域を元気にしてくれます。密にならない屋外イベントなので、コロナがまん延していた時期でも、中止することなく開催できました。


2023年6月25日にひろしまゲートパークで行われた「ゆめタウン presents シティロゲ in 広島 〜イマ・街・ミライ ふるさと再発見じゃ〜」
「シティロゲイニング」にはどのようなDXの技術・仕組みが生かされているのでしょうか。
紙の地図と「シティロゲ®」画面
 シティロゲイニングを企画するにあたり、オリジナルアプリ「シティロゲ®」を開発しました。アプリを使うことで、イベントの準備が簡単になり、人を設置したりする必要もなく、接触機会を減らせます。アプリはGPSと連動していて、設定されたポイントに近づいたことを知らせる仕組み。チェックポイントの確認のたびに紙を広げたり、マークしたりする必要もありません。その場で画面をタップするだけでポイントが自動加算されます。
 GPSを使うことで、電波が届かなくてもゲームの継続が可能です。また、参加者の位置情報が本部で全て把握できるので、運営側も参加者も安心感があります。修学旅行に組み込んだときは、先生が「生徒の行動を画面上で確認できる」と、安全面からも好評でした。
 アプリには、ゲーム性を持たせています。クイズが出題されたり、その場所の説明をしてくれたりと、面白さや楽しさに加え、観光要素も搭載。例えば何の紹介もなく立っている石碑でも、アプリにその歴史やいわれを表示することが可能です。写真を撮ると、自動的にスマホのカメラロールに保存されるので、SNSでシェアしてもらいやすく、思い出にもなります。
チェックポイントで記念写真を撮る参加者
 アプリを使うためには、イベント開催前に「ユーザー登録」をしてもらう必要があります。普段アプリのダウンロードに慣れていない高齢者の参加もありますから、使い方が難しくならないよう改良しました。また、プレー途中でアプリが落ちる(強制終了する)など、不安定な部分を改善しています。今後、インバウンドを対象としたロングラン・シティロゲイニングを予定しています。それらを見越して、アプリはスマホの言語設定に連動した多言語対応となっています。
参加者の反応はいかがだったでしょうか。また、参加者にどのようなメリットがありますか。
 「ガイド本に載っていない、地域の魅力再発見」がコンセプトです。シティロゲイニングを通じて、普段は行かない場所や、気になっていたけど行きにくいところ、地元の人でも通らない路地などにも足を運んでもらいます。例えば、「入りにくいな」と思っていた和菓子店がチェックポイントになっていて、訪れてみるとあまりにおいしい和菓子に驚き、「京都から水を取り寄せている」というエピソードまで知ってさらに驚く―。参加者には、そんな発見と気付きがあります。コロナ禍で「マイクロツーリズム」という言葉が生まれましたが、まさにその通りで、地元を旅して地域を元気にする経験をしてもらえたと思います。その証拠に、ゴールした人たちはみんな「楽しかった!」「新しい発見があった!」と喜んでくれました。
参加者とのふれあいが、地域の事業者の励みになっている
 フィールドを提供する街の人たちのもとへ足を運び、シティロゲイニング開催について説明すると、ほとんどの人が喜んで快諾してくれました。「やる気を失っていたけれど、たくさんの人が訪れてくれて元気になった」と飲食店さんから言われたときは、私もうれしかったです。また、想像した以上に、参加者が買い物や食事を楽しまれています。平均して1人2000円くらいお金を使って帰られるのは満足の証であり、地元の人にとってもうれしいことです。
今後さらに改良したい点やイベントの予定はありますか。また県民に対してメッセージをお願いします。
 シティロゲイニングの認知度が高まるにつれ、九州や関西、関東エリアからも依頼をいただいています。よりよい企画にするために、現地の地域事情に精通したパートナーとタッグを組んでいけたらと思っています。そのためにも営業力、PR力を高めたいです。また、ロングラン開催も強化したいです。2021年1~2月に開催した「とびしま謎解きサイクルロゲ」のように、1日ではなく1カ月の長期開催で、リピーターの獲得を狙いたいです。
 シティロゲイニングは広島発の「スポーツ×観光」イベントです。当社が企画・運営した「広島湾岸TRAILRUN2022」は、第11回スポーツ振興賞観光庁長官賞を受賞しました。今後は広島県内全域で開催して、県民の皆さんに、まずは訪れていない地域や、あまり知らない地域を巡ってもらいたいです。各地を周遊し、新たな魅力を知り、再来訪してもらうことで、広島はもっと元気に、活性化していくはずです。そして、この動きを全国へ広めていきたい。シティロゲイニングは、大きな可能性を持っています。
※シティロゲイニングの詳細はこのサイトをチェック。 https://city-rogaining.com

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