本文へ移動
インタビュー
マイライフ株式会社/常務取締役
佐々木 拓也 (ささき たくや)さん
センサーで睡眠データ取得 健康をサポート
―運営される「オール薬局」では、睡眠を計測して健康をサポートする「ねむりの窓口」を設けられています。どのようなサービスなのかご紹介ください。
 シート型睡眠センサーで、睡眠時間や睡眠効率、中途覚醒時間、呼吸数、心拍数、睡眠時無呼吸症候群の可能性のある指標などのデータを収集し、結果を基に薬剤師や管理栄養士、睡眠健康指導士などの有資格者が健康アドバイスをするサービスです。ご自分では分からない睡眠情報を可視化します。薬局からご利用者さまへの健康アドバイスや服薬アドバイスの質を上げることを目的に運営しています。
 患者さまの寝ている状態は、本人にも医師や薬剤師にも見えていないことに疑問を持ち、睡眠に着目しました。睡眠は、脳や体、心に密接に関連しています。生活習慣や心身の乱れで不調になる前に、毎日の睡眠を軸に心身を整えることで、健康維持・パフォーマンス維持につなげることができると考えています。

シート型睡眠センサー(写真下)とルーター
利用方法を教えてください。
 広島県や岡山県などに43店舗ある「オール薬局」のほか、ヘルスケア複合施設の「オールファーマシータウン」「YMFGオールヘルスケアタウン」でシート型睡眠センサーの貸し出しをしています。事前に電話でご予約いただくとスムーズにお渡しできます。
シート型睡眠センサーの貸出時の様子
 シート型睡眠センサーは横78センチ、縦24.5センチ、高さ1.8センチ、重さ1キロです。マットレスや敷布団の下に敷いてお使いいただきます。シート型睡眠センサーと専用ルーターの電源をコンセントに差し込めば、計測を始められます。専用ルーターがセットになっているため、インターネット環境がない方でもご利用いただけます。
 計測期間は基本的に1週間です。終了後、貸し出しした店舗まで睡眠センサーを持って来ていただきます。その際、計測結果のレポート「おねむり手帳」をお渡しし、専門スタッフが眠りの質を上げるためのアドバイスをします。貸し出しからアドバイスまで含め、料金は3850円です。より詳しいアドバイスを希望される方には追加料金でカウンセリングもしています。

どのようなDX技術が生かされていますか。
 体に直接センサーが触れることなく睡眠データを取ることができるのが最大の特徴です。センサーは非常に優秀で、呼吸や心拍など睡眠時のわずかな振動を拾ってデータ化します。寝相が悪くて多少ずれても計測できます。
 近距離無線通信「ブルートゥース」でシート型睡眠センサーから専用ルーターにデータを飛ばし、ルーターを通じてクラウド上のサーバーにデータを送っています。取得したデータはパラマウントベッドさま(東京)とNTT西日本さま(大阪市)による合弁企業NTT PARAVITAさま(大阪市)のAI(人工知能)エンジンで解析し、「おねむり手帳」というレポートにまとめてご利用者さまに提供します。「おねむり手帳」では1週間の睡眠データを棒グラフや線グラフで分かりやすく表示します。例えば「睡眠日誌」という項目では「睡眠」を青色、「覚醒」を黄色で表します。もし黄色が多ければ、睡眠の質が良くない状態ということです。「睡眠スコア」として、総合評価の点数も付きます。

睡眠センター貸与からデータのレポート化までの流れ
システムはどのような経緯で開発されましたか。
 2017年、薬局でも使える睡眠計測サービスの共同開発をパラマウントベッドさまと始めました。プロトタイプ(試作品)の運用は18年からスタート。その頃はクラウド上のサーバーにデータを送る仕組みがありませんでした。睡眠センサー本体にSDカードを備えてデータを記録し、睡眠センサー返却後にSDカードに入ったデータを解析していました。その後、NTT西日本さまも開発に加わることでクラウド上のサーバーにデータを送る仕組みができました。
 現サービスは、21年7月から始めました。NTT PARAVITAさまと連携して「ねむりの窓口」を運営しています。当社は薬局向け「ねむりの窓口」の独占代理店でもあり、全国の薬局へも普及を進めています。

睡眠情報を可視化することで、どんなことが分かりますか。
 例えば、ぜんそくやアトピーの影響で体がよく動くと、「活動量」の数値が高くなります。薬は合っているのか、きちんと服薬できているのかなどを検証できます。「離床回数」が多ければ、トイレに頻繁に起きていらっしゃるということです。そのような方には、寝る前に緑茶やコーヒーを控えていただくなどのアドバイスをすると改善されるケースがあります。早くベッドに入り過ぎている方が睡眠の質を落としていたり、なかなか眠れないと思っている方が実はしっかり睡眠が取れていたりすることも分かります。
 最近多いのは、寝ている時にご主人の息が止まっているような気がすると、奥さまが心配されてご主人が「ねむりの窓口」を利用されるケースです。計測する「呼吸イベント指数」が高いと、睡眠中に呼吸が一時的に止まったり弱くなったりする睡眠時無呼吸症候群の可能性が高く、病院の受診をお勧めします。「ねむりの窓口」の利用者の1割を専門医の受診につなげました。

ほかにもDXを活用しているサービスがありますか。また、「ねむりの窓口」のサービスを通じて目指していることを教えてください。
 有料会員サービス「オール健康くらぶ」があります。会員になると、体に身に付けているだけで活動エネルギー量や消費エネルギー量などが計れる「活動量計」をお渡しします。呉市や東広島市などにある「オールラボ」で血圧や血管機能などを測定し、集めたさまざまなデータをクラウド上のサーバーに送り、スマートフォンの専用アプリで閲覧できるようにします。栄養カウンセリングも月1回実施。血液数値の改善や減薬などの目標を個別に立て、健康増進につなげています。
「オール健康クラブ」のPDFパンフレットがサイトから確認できる
 われわれの最大のミッションは、「健康寿命の延伸」です。地域の健康寿命を支えるために、計測したデータを役立てたいと思っています。
 薬局は処方箋を持って行って薬を出してもらう場所というイメージが強いですが、健康についての相談をどんどん受けたいと思っています。体重や身長を測るように睡眠データを定期的に測る文化を根付かせて、前回のデータと比べて変化があったときに、何が原因かを探るというようにデータを基にしたアドバイスをしていきたいと考えています。
 在宅医療でも睡眠データの活用が始まっています。近年、在宅療養されているケースは非常に増えており、われわれもお薬の説明をするためにお伺いしてサポートしています。認知機能が下がってきている患者さまが話されることがその都度変わり、何が正しいか判断しづらい場合は、正確な情報を得るために在宅医療チームへ睡眠データを取る提案をしています。データを基に医師が薬の調整をされたり、ケアマネジャーがケアプランを練り直されたりするなど活用していただいています。言葉では伝えきれない患者さまの思いを、センサーを通じて優しく見守れたらと思います。


マイライフ株式会社 ホームページ:https://my-life.jp/

TOPへ戻る