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インタビュー
広島市/道路交通局自転車都市づくり推進課 課長
柴田 知子(しばたともこ)さん
株式会社ドコモ・バイクシェア/シェアリング事業部第二事業担当
細田 歩(ほそだあゆむ)さん
シェアサイクルで移動の利便性高める
広島市の柴田課長(写真左)と株式会社ドコモ・バイクシェアの細田さん(同右)
広島市中心部で、赤い自転車が風を切って走っていくのをよく見かけます。観光客や市民に親しまれている広島市シェアサイクル「ぴーすくる」の概要について、教えてください。
 柴田 ぴーすくるは、全国各地で自転車のシェアリング事業を運営しているドコモ・バイクシェアさま(東京)と共に市が展開しているシェアサイクルです。現在では中、東、南、西区、府中町に141カ所のサイクルポートを設置し、電動アシスト自転車850台を稼働させています。借りた自転車をどこのサイクルポートで返却してもいいのが、この事業の特徴です。
 小回りの利く自転車を観光客のための新たなツールにしようと2015年、サイクルポート14カ所、自転車150台の規模からスタートさせました。利用者数が年々1.5~2倍と増えていくのに伴って、サイクルポートや自転車の数も増やしていきました。最近では、観光客の利用より市民が日々の通勤・通学、買い物の足として利用している割合が高いです。2022年度の利用回数は、約84万回にも上ります。

広島市シェアサイクル「ぴーすくる」で活用されている赤い電動アシスト自転車
 細田 利用方法はとても簡単です。まず、スマートフォンに「バイクシェアサービス」のアプリをダウンロードして会員登録します。自転車を借りる時は、アプリでサイクルポートと自転車を選んで予約。開錠する方法はパスコードを取得して自転車のパネルに入力するか、もしくは自転車のQRコードをスマートフォンで読み取るかのどちらかです。交通系ICカードを鍵として登録し、自転車にかざして開錠することもできます。返却する時は、目的地近くのサイクルポートをアプリで探して駐輪し、施錠してエンターボタンを押すだけ。返却メールの受信を確認したら、返却完了です。

電動アシスト自転車の解除方法の説明
 柴田 料金プランも柔軟に設定しており、1回会員(最初の60分165円、その後は30分ごとに165円)や1日会員(1100円)、月額会員(3300円、最初の30分0円、その後は30分ごとに165円)などがあります。観光客に便利な1日パスは、ぴーすくるの運営事務所など有人窓口で1527円、コンビニの端末などでは1100円で購入できます。

利用回数は2022年度だけで80万回を超える
―ぴーすくるには、どのような技術が使われていますか。
 細田 自転車には、スマートフォンに入っているSIMカード(加入者を識別するためのID番号が記録されたICカード)を搭載しています。衛星利用測位システム(GPS)を活用して自転車の位置情報を取得し、利用開始から返却までを管理しています。全ての情報をビッグデータに集め、需要の分析をしています。
 当社はモバイル技術と自転車を組み合わせ、環境に優しくて地域活性化にも役立つ事業を始めようと11年、横浜市で初めてシェアサイクルをスタートさせました。現在では、東京広域(15区)や広島、大阪などの都市で自治体と共に運営しています。システムだけを提供しているエリアも数多くあり、それらも含めると全国49地域に広がっています。ちょうど事業を始めたころは「スマートフォン元年」といわれるほど、スマートフォンの普及率が高まった時期でした。その波に乗って、モバイルとの親和性が高いシェアサイクル事業を拡大していきました。
ぴーすくるのアプリ画面。最寄りのサイクルポートにある自転車の台数などが分かる
―人気の理由はどこにありますか。
 柴田 自転車を「購入して乗る」という発想から離れ、自転車をレンタルして目的地で返却するというシステムに利便性を感じてくださる方が多いのではないでしょうか。新型コロナウイルスが感染拡大した時期は、観光客の利用はほとんどなくなった一方で、密を避けるために通勤・通学の手段を公共交通機関から自転車に変更したり、在宅による運動不足を補う目的で利用したりする人が増えたと感じています。新型コロナウイルスの法的位置付けが5類に移行し、日常を取り戻しつつある今は観光客も戻ってきているので、自転車で巡った広島の良さを発信していただけるのではと期待しています。
 細田 シェアサイクルは自転車を駐輪する場所に悩まなくてもいいですし、自転車に不具合があれば利用者にアプリ上で指摘してもらい、当社が修理しているので個人でのメンテナンスも不要です。環境や経済性を考えて物を持たずシェアするといった考えやサブスクリプション(定額利用)が、私たちの生活に定着したことも追い風となっていると思います。

―民間企業と自治体が一緒に取り組むメリットは何でしょうか。
 柴田 市単独で運営するのは難しいので、システムを開発して他のエリアでも成功させている企業と連携することができるのはありがたいですね。また、収集した利用者のデータ分析などによって、観光スポットだけでなく、コンビニなど市民の生活圏内にもサイクルポートを設置するなど、利便性を高めることができています。今後は、そのデータを街づくりに活用できると期待しています。
 細田 市民と向き合って仕事をしている市職員の方たちから、利用者に近い立場で意見をいただけるので、ニーズを把握できて助かります。これまで、収集したデータを基にサイクルポートの設置や自転車の配置に役立ててきましたが、今後は、自転車利用の多い道路の安全性向上など別の観点でも貢献していけると感じています。

―今後の目標とともに、利用者の皆さんにメッセージをお願いします。
 柴田 ぴーすくるのサービスを広島市中心部からじわじわと周辺地域に広げ、もっと便利に利用できるようにしたいですね。安佐南区や安佐北区、安芸区、佐伯区などは、未開拓の地域。最寄りのサイクルポートが遠く、不便に感じている方を少しでも減らして街の活性化にもつなげたいですね。市民の皆さまには、自転車に安全に乗っていただくためにも道路交通法の改正で努力義務となったヘルメットの着用をお願いします。
 細田 当社も、サイクルポートの密度を上げていきたいと考えています。また、シェアサイクルを利用することによって、車での移動と比較してどの程度二酸化炭素の排出量を削減できたのか、アプリの利用履歴から確認できる機能を新たに搭載しました。環境に貢献していることを実感し、楽しみながら利用してもらえたらいいなと思います。シェアサイクルを経験したことのない方には、ぜひ試して便利さを実感してみてください。

消費カロリーや車での移動と比較した二酸化炭素の削減量が分かるアプリ画面
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