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インタビュー
株式会社エディオン/マネージャー

大屋 雄三(おおや ゆうぞう)さん
電子プライスで業務改善 ECとも連動
電子プライスとはどのようなものでしょうか。
 小型ディスプレーに売価やポイントなどの情報を表示させるシステムで、一般的には電子棚札(ESL)ともいいます。本部で一斉配信した売価やポイントなどの情報が、設定したタイミングで瞬時に店頭に反映されます。
 電子プライスのハードウエアとしては、紙のように薄い素材でできており、白・黒・赤の3色で文字や数字を表示できる「電子ペーパー」を採用しています。電子ペーパーは液晶ディスプレーと異なり、表示を書き換える時のみ電力を消費するため、ボタン電池で数年使用することができます。

電子ペーパーには売価のほか、簡単な特典情報も表示可能
―導入のきっかけや狙いを教えてください。
 当社は、話題の最新家電からリフォーム関連、スマートフォン、おもちゃ・TVゲームなど豊富な品揃えでお客様をお迎えしています。その取扱いアイテム数は、中規模の店舗でも数万点に及びます。セールや市場の状況に応じて、1回あたり数千アイテムの売価が変更になることもあります。そのため、紙プライスを張り替えるのが大きな負担になっていました。貼り替え作業に時間がかかる上、時には売価の変更漏れや貼り間違えなどのヒューマンエラーが発生し、お客様にご迷惑をお掛けすることもありました。
 こうした業務負担を軽減しようと、2015年頃から検討し、18年に数店舗でテスト導入しました。使い勝手や効果を検証した上で、21年から本格的な導入に着手し、現在では約450の全直営店に導入しています。
―電子プライスの導入でどんな効果がありましたか。
 課題だった紙プライスの貼り替え作業がなくなり、業務が大幅に効率化された分、接客に時間を充てられるようになりました。紙プライスの頃は、接客の合間にバックヤードでプライスの印刷や裁断などプライス貼り替えの準備作業に手を取られていました。お客様応対の多い日には作業が遅れ、残業になることもありました。電子プライス導入後には、こうした作業がなくなり、売り場でお客様の応対に集中できるようになりました。
 以前は、本部でも紙プライスの貼り替え作業を軽減するために、売価変更のタイミング調整など様々な工夫を行っていました。しかし、現在は作業負担を気にすることなく、タイムリーに変更指示を出すことができます。表示売価の更新は翌日の営業時間までに自動で行われますが、仮に入力ミスがあった場合などは10~20分程度で修正可能です。また、市場の状況による急な売価変更にも対応できるようになりました。

エディオンの全直営店に電子プライスを導入。本部で売価を入力すると、全店一斉に表示される。これにより、紙プライスの貼り替え作業の負担がなくなった
―来店者の反応はいかがですか。
 電子プライスは、紙プライスと見た目の印象があまり変わらないので、ほとんどの方は違和感がないと思います。しかし、スタッフがより接客に集中できるようになったことで、お客様の満足度は確実に高まっていると思います。例えば「複数メーカーの製品の特長をしっかり教えてもらえたので、比較検討の参考になった」「便利な使い方や操作方法まで、丁寧に説明してもらえたので、安心して購入できた」などの声をいただいています。また、当初購入を予定していた商品よりも、ワンランク上のものを購入いただけるケースも増えました。
 「展示品の周りがすっきりして、商品を見やすくなった」という感想をいただくこともあります。以前は値札だけではなく、「期間限定10%ポイント進呈」など、特典情報などのポップなども掲示していました。今では、電子プライスの機能が進化して、こうした情報も表示できるようになり、掲示するポップが減ったことが要因だと思います

―導入や運営に当たり、苦労や工夫をした点はありますか。
 電子プライスを、2年間ですべての直営店に設置することを目標としました。1週間で4店舗ずつ設置する必要があり、スケジュール管理やチーム編成に苦心しましたが、ほぼ予定通りに進めることができました。 
 電子プライスに表示される情報が見やすいように、フォントサイズなどデザインにも工夫を凝らしています。表示スペースが限られるため、価格以外の情報は商品ごとに「お客さまにとって本当に有用なのか」といった観点から優先順位を決め、上位のものだけを表示するようにしています。現場のスタッフから、「接客に必要な社内情報も表示してほしい」と要望がありました。しかし、表示スペースが確保できないため、配達や在庫などの社内情報は、すでに導入していた携帯型タブレット端末を活用することで対応しました。

―電子プライスとエディオンアプリを連動させ、電子商取引(EC)サイトにつなげるサービスも提供しています。仕組みや特長を教えてください。
 NFC(近距離無線通信)を利用した、エディオンアプリの機能の一つです。お客様がご自身のスマートフォンのエディオンアプリから、「スマホでスキャン」のメニューを起動して、電子プライスにかざすと、エディオンネットショップの商品ページが表示されます。そこでは、商品の詳細情報や口コミ情報、説明動画などが閲覧できます。店舗で商品の実物を手に取りながら、詳細な情報をサイトで確認するといった「リアル店舗とネットを融合した新しい買い物体験を提供する」のが狙いです。お客さまからは「商品の機能が分かりやすく、参考になる」と好評です。
エディオンアプリのスキャン画面を立ち上げ、電子プライスにかざすと、ECサイトにアクセスでき、商品情報を入手できる
―電子プライスやDXを生かしたサービスの今後の展望とメッセージをお願いします。
 近年、電子プライスの大型化、高機能化が進んでおり、導入を検討しています。表示レイアウトも、価格や特典をより分かりやすくお伝えできるように、今後もこだわり続けたいと思っています。
 DXを販促に生かす取り組みとして、折り込みチラシや上得意様向けのご招待状のデジタル化を進めています。例えば、エディオンアプリと連動することで、利便性がさらに高まるはずです。DXはそれ自体が目的なのではなく、お客さまがより安心して快適に便利にお買い物を楽しんでいただけるような環境を整える手段の一つと捉えています。今後も積極的に活用していきたいですね。

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