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インタビュー
株式会社広島ホームテレビ/コンテンツ本部 デジタル局 コンテンツグループ
江本 武史(えもと たけし)さん
AIカメラで大会を配信 スポーツ熱高める
どのようなDXに取り組まれていますか。
 広島県のスポーツ熱を高めようと2022年2月、人工知能(AI)を活用したスポーツ映像配信を手掛けるNTTスポルティクトさま(大阪市)と「AIソリューションを活用したスポーツ映像配信に関する共同事業」の協定を締結しました。NTTスポルティクトさまが提供するAIによる無人撮影・配信システム「STADIUM TUBE(スタジアムチューブ)」を使って、小中高生のバスケットボールを中心に学生スポーツの試合を撮影し、自社サイトの特設ページで配信をしています。
 試合の映像はパソコンのほか、タブレットやスマートフォンからも見ることができます。普段は目にすることの少ない学生スポーツを気軽に見られると、出場チームやその保護者、純粋な競技のファンら、多くのユーザーに喜ばれています。

セッティングされた配信機材と自社サイトの特設ページ
―NTTスポルティクトと協定を結び、映像配信サービスを始めた経緯を教えてください。
 当社はスポーツ応援キャンペーン「勝ちグセ」を2008年に掲げ、これまでプロアマ問わず広島のスポーツ界を盛り上げてきました。その一環として、16年から「全国高校野球選手権広島大会」のライブ配信を開始。その視聴数の多さから学生スポーツのニーズの高さを実感し、それを他の競技でもできないかと考えるようになったのがきっかけです。
 加えて、20年から新型コロナウイルスが流行し、試合会場への入場規制で無観客での大会実施が常態化する中、配信を希望する大会主催者のニーズとマッチしたことも、取り組みの後押しとなりました。
 さらに21年、地上波放送ではリーチできない視聴者に向けて自社コンテンツを届けると共に、テレビとは一線を画した新規デジタルコンテンツの開発をにらみ、「デジタル局」が社内に新設されました。ユーチューブのチャンネル運営を通じて、ライブ配信や動画制作を数多く実施しており、そうした経験によって、ライブ配信の知識や技術面でのインフラが社内で整ってきたのも、サービス導入を推し進めました。
 しかし、うまくいくことばかりではありません。人手が足りないという根本的な問題が残されていました。従来の作り方ではディレクターやカメラマン、技術や配信のスタッフなど1試合につき5人以上のスタッフが必要です。複数の試合が同時に進む学生スポーツの現場では相当数の人員が必要で、当時の体制では大会の配信は不可能でした。そこで、NTTスポルティクトさまから提案を受けていた「スタジアムチューブ」の活用を決め、学生スポーツのライブ配信を始めました。

―撮影の技術や配信の仕組みを教えてください。
 システムの中枢はイスラエルのPixellot(ピクセロット)が開発した無人投影カメラシステム「Pixellot」です。四つのレンズを組み合わせたマルチカメラデバイスで、パソコン操作で撮影範囲をカメラに認識させ、定点で競技場全体を撮影します。サッカーやバスケットボール、バレーボールなど16種類の競技に対応しています。
 試合前にパソコン操作で撮影の開始時間を設定するので、試合開始と同時に自動で撮影がスタート。システム内でマルチカメラ映像が自動的に合成され、競技フィールド全体の高解像度の映像を作り出します。AIがボール保持者の動きを感知し、アップやパン(カメラを左右に振ること)が自動で行われ、本物のカメラマンが撮影しているかのような自然なカメラワークになります。
 映像の配信は「Videoflow」という付属のシステムを使っています。現場のスタッフがシステムの管理画面で配信枠を生成し、そこにカメラのライブ映像をつなげます。

配信機材一覧とパソコンでセッティングしている様子
―ユーザーからの評判や利用状況はいかがですか。
 会場に行けなくてもインターネット上で試合を視聴できると喜ばれています。アーカイブが残るので、試合の振り返りや、次の対戦相手やライバルチームの研究に使っていただくこともあるようです。試合ごとにDVDも制作しており、記録用に手元に残したい人やチームに買っていただいています。簡単に配信や動画が残せる「スタジアムチューブ」は、地域のスポーツクラブのほか、競技施設そのものが導入しているケースもあるそうです。
 NTTスポルティクトさまと業務提携前に初めてライブ配信をした21年の「全国U15バスケ選手権広島県予選」では、「子どものプレーする姿が見れた」「感染リスクなく見ることができる」「アーカイブが残るのでうれしい」など、現場でお声掛けいただいたこともありました。
 それ以降の大会も、大会の主催者さまから配信依頼をいただいたり、当社から配信の提案をしたりするなどして、これまで9大会の配信を手掛けました。中でも、23年3月にあった「第51回全関西バスケットボール大会」は8万5千再生を記録。県内の高校だけの大会では、22年の「広島県高校総合体育大会バスケットボールの部」で4万再生を記録しました。小中高それぞれのカテゴリーによって差はありますが、着実に再生回数は伸びてきており、バスケ熱の高まりを感じています。

Videoflowで生成した配信ページ
第51回全関西バスケットボール大会(
https://www.videoflow.io/channel/vfc-8mado_v-w

―導入や運営にあたり、苦労した点はありますか。また、今後の課題はありますか。
 競技エリアを認識させるカメラの設定です。同封されたマニュアル通りにパソコンで設定をしますが、入力ミスやカメラの向きなどの微調整に時間がかかり、試合開始に間に合わなかったことがありました。当初は設置から設定まで1時間程度要していましたが、今では操作や用語に慣れたこともあり、それが半分くらいになりました。
 大会の全試合のライブ配信が今後の課題であり目標です。機材と人手に限りがある中、当社だけではクリアできないので、協賛社さまを募ったり、協力会社さまの力を借りたりして実現を目指します。そのためにも、こうした取り組みを大会関係者だけでなく、県民の皆さまにも広く知ってもらえるよう、周知を強化していきます。

―県民へのPRなど、メッセージをお願いします。
 当社では「勝ちグセ」を中心に、スポーツに関わる全ての人を応援しています。今は学生バスケットボールの大会が中心ですが、23年2月に「第39回フジタ杯女子サッカー大会」、7月に「市民球団親善交流試合 福山ローズファイターズVS広島東洋カープ(2軍)」の配信を行うなど、他の競技の配信も試みています。試合数や競技など配信の幅をこれから広げていき、広島県のスポーツ熱がより一層高まるよう、取り組んでいきます。ぜひ、当社のウェブサイトや番組をご覧いただき、配信情報のチェックをお願いいたします。
株式会社広島ホームテレビ 勝ちグセ(https://www.home-tv.co.jp/kachiguse/
勝ちグセ バスケットボール大会試合配信(
https://www.home-tv.co.jp/sports/aibasketball/
第51回全関西バスケットボール大会(
https://www.videoflow.io/channel/vfc-8mado_v-w


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