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インタビュー
株式会社リノベートファーム/代表取締役
岡田 真規(おかだ まさのり)さん
エアコンの稼働状況を可視化する仕組みを開発し、
業界を変える新たなサービスを提供
―IoTを活用したエアコン稼働状況の可視化による新サービスを導入しようと思ったきっかけについて教えてください。
 当社では「快適空間をレンタルする」をコンセプトに、空調設備工事以外にもエアコンのレンタルや中古エアコンの販売を行っています。常により快適な空間をご提供するため、当社独自のサービスとしてレンタルでは、最新のエアコンを定期的なメンテナンス(フィルター交換・室内機洗浄)付きでご利用いただけるだけでなく、故障時の修理対応も無償で行っています。エアコンは10~15年は使用できますが、当社のレンタルでは5年で新しいものに取り換えるので、持ち帰ったエアコンは中古エアコンとして新品の3分の1程度の価格で販売しています。ただ、お客様からすれば、中古エアコンというと、中古車のように事故車かどうかや走行時間がわからないので、判断が難しいですよね。そこで、中古エアコンにも故障履歴や稼働時間がわかるような装置や仕組みを作れないかな、と考えたのがきっかけです。
 アイデアはあってもそういう仕組みは世の中になかったので、広島県の窓口に相談に行ったところ、ビジネスマッチングで一緒に装置を開発してくれる会社を紹介してくれたのです。開発費用には900万円かかる見込みで、あきらめかけたのですが、国からのモノづくり補助金が700万円出ることになり、踏み切ることができました。ダイキンさんからエアコンの技術の情報提供も受けることができ、ダイキン社製エアコンに取り付けることで、稼働状況や故障などの状態を当社が遠隔監視できる装置を開発しました。
新規出店のため契約のあった美容室の施工事例。前入居者が残置していた古い機器を撤去し、当社プランの機器を新たに設置
―新サービスがどのようなものなのか、具体的に教えてください。
 IoTを活かした新しいレンタルエアコンサービス「ネクストR+(プラス)」では、エアコンの稼働状況をすべて可視化することができるため、エアコンをつけなかった月は月額のレンタル料金が不要です。トレンドのサブスクは、使っても使わなくても毎月一定額を支払う必要がありますが、エアコンレンタルにも競合他社が出てきている中、使わない月はレンタル料がかからないというメリットをお客様にご提供することができます。
 今回開発した遠隔監視装置は、中にWi-Fiのモジュールが入っていて、エアコンの稼働情報を当社のパソコンで確認することができます。このとき、稼働時間だけでなく、エアコンに故障がある場合はエラーが表示されるため、お客様にこちらから「エアコンが故障しているようですので見に行きます」とお声がけすることができ、より細やかで能動的なサービスをご提供することが可能になります。
エアコン内部に取り付ける遠隔監視装置
―取り入れたお客様からはどのような反響がありますか。
 2022年12月に発表して、これからサービスを開始していくところなので、まだモニターのお客様のみとなりますが、とても良い反響をいただいています。やはり、「春や秋には使わない月もあるけど、そういう月はレンタル料がいらないならお得だね」といったお声が多いですね。コロナ禍などで休業している間も、レンタル料がかからないのであれば安心してご利用いただけます。当社としても遠隔で操作できるため、全国展開しやすいというメリットがあり、1月から首都圏でテスト的にYouTubeやGoogle広告を出したところ、すでにいくつかお問い合わせをいただきました。実際に東京の大型リゾート施設で53台のエアコンを導入いただいたのですが、お客様からもご満足いただいています。
 レンタルの需要が増えれば、在庫が増えるので、その後の中古エアコン販売にもつながります。業務用エアコンは壊れるまで使うお客様が多いので、中古として流通しにくい状況がありました。移転や閉店などで店がなくなるときにはゴミになってしまうことも多かったところを、中古として再販することができれば産廃ゴミの削減にもつながります。空調機の寿命はだいたい2万時間程度と言われていますので、たとえばまだ3000時間しか使っていないエアコンであれば、保証をつけるなど付加価値をつけてご提供することもできるのです。
―どのような企業・団体から引き合いがありますか? また、導入に際しての費用感は?
 道の駅やオフィスビルなど様々な企業・団体様からお問い合わせをいただいておりますが、当社の主なお客様は飲食店さんと美容院さんです。販売やリースだと、通常次のお取引はエアコンが壊れる10年、15年先になりますが、当社のレンタルであれば3か月~半年に1回フィルター清掃に伺うので、お客様とのおつきあいを継続できます。定期的にお伺いする中で、内装工事などの別のお仕事をいただけることも多いですね。
 通常のエアコンレンタルでは初期費用はかからないのですが、「ネクストR+(プラス)」の場合はWi-Fiの設定費用として最初に2万円(税別)をいただいています。レンタル料はエアコンによって違いはありますが平均1万円ほどで、IoTによる遠隔監視がある場合は500円(税別)ほどレンタル料が高くなります。ただし、使わなかった月は月額のレンタル料が不要になるので、より良いサービスを受けていただきながら、コストを削減できます。
定期的に実施するフィルター清掃の様子。飲食店や美容室では3か月ごと、事務所などは半年に一度実施
―本サービスを提供することで、自社にとってどのような効果が生まれましたか?
 お客様から「効きが悪いような気がする」といったお問い合わせをいただいた場合も、当社の管理画面で故障の状況がわかるので、エラー表示が出ていなければ設定温度の変更などのご案内をし、遠隔で解決に導くことができます。これまではマイナートラブルのたびにスタッフを派遣していたので、そこにかかる交通費などのコストを削減することができました。月額のレンタル料をお支払いいただけないときにもその都度代金回収に行っていたのですが、遠隔で強制停止することもできるので、未回収に陥りにくいということがあります。これにより、人手がなくても全国展開しやすくなりました。
 今回の新サービスを作るにあたって、有志のプロジェクトチームを作ったのですが、新入社員の2人が先入観のない新しいアイデアをどんどん意見してくれました。新入社員のほうも期待されていると感じて一生懸命に取り組んでくれましたし、ベテラン社員にも刺激になりましたね。YouTube広告も、新入社員が「僕たちの世代はテレビを観ないので、やったほうがいいですよ」と言ってくれたんです。DXの取り組みを通して、社内が活性化されていますね。
―他に取り組まれているDXの事業や、今後チャレンジしていきたいことがあれば教えてください。
 最初の取り組みは、コロナ禍で直接お客様先に出向くことが難しかった時期に、LINEやZOOMの動画機能を使い、遠隔で現地調査を行えるようにしたことです。お客様にエアコンの知識がなくても、ポイントをお伝えしながら機器の設置環境を撮影していただくので、遠方でも即日見積提出が可能となりました。これまで近隣しか対応できず、新規開拓が広がっていかなかったのですが、ホームページでこのようなオンライン相談(見積)を掲載したところ、福岡や東京からも問い合わせがくるようになりました。また、「ネクストR+(プラス)」を通してエアコンのデータを集めることで、ビックデータを分析し、より良いサービスにつなげることもできます。たとえば、エアコンが壊れると修理や取り換えに3日ほどかかることがあるのですが、その間の営業補償付きのプランをご用意することもできるかもしれません。ダイキンさんだけでなく、他のエアコンメーカーさんからも情報を提供するから装置を作ってほしいという声をいただいています。DXによって、構想だけはどんどん膨らんでいるので、今後も社員と一緒に新しいことに取り組んでいきたいですね。
株式会社リノベートファーム ホームページ:https://www.renofarm.co.jp/
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