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インタビュー
安芸太田町
志水 大将(しみず ひろまさ)さん
『morica』を使った地域通貨事業で、より便利で暮らしやすい町へ
―地域通貨事業『morica』を開始しようと思ったきっかけと、その目的について教えてください。
 『morica』は安芸太田町の地域通貨事業として、2022年12月1日に導入し、安芸太田町の町民全員に、町が7000円分の電子マネーを付与して『morica』カードを交付しました。これは、令和4年5月に安芸太田町で策定された、DX推進計画に基づく取り組みの一つとして始まったものです。地域通貨とともにDX共通基盤と公共交通分析システムを構築し、DX共通基盤に集約したデータベースを多分野横断的に活用していこうというのが目的です。
 地域通貨事業としては、チャージした際にチャージ額の2%のプレミアムが付与されるため、町民の皆様への物価高騰対策となります。また、『morica』は町内の加盟店でしか利用できないため、地域経済の活性化を通じて、町内事業者の皆様の支援につなげることができます。
安芸太田町DX推進計画上の位置づけ
―『morica』でできることを具体的に教えてください。
 『morica』は町内の加盟店で、地域通貨としてご利用いただけます。スーパーやホームセンターだけでなく、飲食店や病院、ガソリンスタンド、車検など幅広く活用できるのがメリットです。また、安芸太田町には定額タクシーという、中学生以上の町民の方なら誰でも700円(障がい者手帳所持の方は600円)で町内を移動できる公共交通事業があるのですが、『morica』はこの定額タクシーの利用証明書としても使えます。これにより、定額タクシーを利用するために毎年必要だった紙の申請や利用証明書の発行が不要になりました。交通事業者さんも、これまで実際のメーター料金と700円との差額を計算して、利用実績を毎月紙ベースで集約して町に提出してもらっていましたが、『morica』が利用実績を自動で集約して出力できるようになったため、町に補助金を申請する手間を省くことができます。さらに、町としては誰がどの区間で定額タクシーを利用したのかというデータを『morica』を通してDX共通基盤に集約することができます。これらのデータを、DX共通基盤とAPI連携させた公共交通分析システムで分析を自動化することで、バスやデマンドタクシーなどの他の公共交通も組み合わせた、より良い公共交通事業へ落とし込むことが可能になるのです。また『morica』は、マイナポイントとも連携し、マイナンバーカードを取得して申請いただくと、最大20,000マネー(=morica20,000円分)が付与されます。
『morica』の主な活動範囲
―実際にカードを使った方からの声を教えてください。また、導入後、利用者はどのように推移しているのでしょうか。
 0歳からの町民の皆様全員にお配りしているため、普及率は100%です。
 『morica』の発行は安芸太田町ですが、電子マネーの運用管理は町の商工会であるハートフル協同組合に委託しているので、加盟店を増やすことに関してはハートフル協同組合にも協力してもらっています。電子マネーの運用管理といっても、ハートフル協同組合のほうで個人情報を扱うことはなく、電子決済なので人手はかかりません。ただ、高齢の加盟店さんも多い中、iPadやQRコードリーダーを無償貸与されても、扱いが難しいということもあるので、加盟店は焦らず増やしていくつもりです。最初は50店舗を目標にしていたのですが、2月1日時点で加盟店73店舗に増えていますので、こちらも町の規模的には上々の推移といえます。
―カードの発行・使用に制限があれば教えてください。
 『morica』カードは町民の皆様にしかお配りしていないため、カードは安芸太田町の町民しか使えません。しかし、アプリの発行もしているので、町外の方はご自身のスマートフォンに『morica』のアプリをダウンロードしていただければ、ご利用いただけます。ただし、定額タクシーは町民の方限定です。
 来年度からは外貨の獲得のために、観光でいらっしゃった方へのアプリの利用促進も進めていきたいと考えています。アプリでもチャージすることで2%のプレミアムがつくのですが、2%のプレミアム率は他のキャッシュレス決済と比較しても高いので、町外の方にもメリットはあると思います。アプリをダウンロードしたときに特典をつけるなどの促進事業は検討していきたいですね。
―今後、検討中の新しい活用法や方針があれば教えてください。
 最初にお話したように、『morica』事業は地域通貨としてだけでなく、住民の皆様のご利用データをDX共通基盤に集約し、公共交通サービスなどにも活用するのが本来の目的です。今後は当初の目的に沿って、防災や医療、教育の分野などに多分野横断的に活用していきたいですね。『morica』のアプリを活用して、マイナンバーカードで公的個人認証を取得できるようにすれば、アプリを個人が使っているという認証がとれますし、個人に対する行政情報もアプリを通して発信できるようになります。たとえば、毎朝7時に「今日は燃えるゴミの日です」といった生活情報をお伝えしたり、防災の緊急情報の通知や、「あなたはこういう補助金の対象ですよ」とお知らせしたりもできます。高齢の方がタクシーや病院に行ったことをご家族が確認できるようにすれば、見守りとしても活用できます。また定額タクシーも、障がいをお持ちの方、目的地別、年齢別など、自動的にmoricaで判定した割引サービスも検討することができます。定額タクシーがカードやアプリでより簡単に使えるようになれば、高齢の方の事故率も下がり、町の安全性も確保されるでしょう。『morica』を通じた様々なサービスにより、より魅力的な町づくりにつなげることが目標です。
『morica』のスマホアプリ連携
―今後、チャレンジしていきたいことがあれば、教えてください。
 『morica』に関しては、システム構築から現金チャージ機の導入、交付時の7000円の配布などは、すべて国や県の交付金を活用しています。今後も限られた予算の中で、期間限定の特典イベントなどを積極的に考えていきたいですね。今回、事業の策定から約半年間という短期間でスタートできたのは、自治体が小さいので小回りが利いたからという面もあると思います。全国から視察のご依頼や問い合わせをたくさんいただいているので、たくさんの方にご意見をいただき、町のDX推進を加速させたいと思っています。
安芸太田町DX推進計画構想 鳥瞰図
安芸太田町 ホームページ:https://www.akiota.jp
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