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インタビュー
株式会社ZIPCARE/介護福祉士
坂本 創志 (さかもと そうしさん
介護業界の人手不足を補い、現場のコミュニケーションを促進するICT見守り機器を開発
―高齢者向けのICT見守り機器の開発、提供に取り組まれたきっかけについて教えてください。
 元々はホールディングカンパニーである東洋電装株式会社の介護事業部にて、介護施設のネットワーク構築支援とICT見守り機器の販売をしていました。2015年に高齢者向け見守りロボットの「まもる~のStation」が発売され、東洋電装は販売パートナーとして活動していました。そこからご縁があり、2019年から事業譲渡という形で「株式会社まもる~の(現:株式会社ZIPCARE)」を設立しました。現在はより介護現場のUX/UIを追求した「クラウド型の見守りロボット」としてアップデートし、介護施設向け「まもる~のSHIP」と在宅介護向け「まもる~のONE」を開発しました。介護施設様にはこれまでに累計4000台以上を導入いただいております。
 実は、介護業界はDXがとても遅れているのです。(介護施設の見守りロボット導入率は13.9%※1)
 理由は、「人によって人を介護する」という人の温かみを大切にする文化があるからで、ロボットで効率化というと「冷たい」と良くない捉え方をされがちです。しかし、人材不足が限界を迎え、ようやくDXが導入され始めたという段階です。当社では、経験のある介護者が人の手でやるべきケアに集中できるように、データ活用の経験がない方にもわかりやすく伝えられるものを作っていきたいと考えています。

※1 [令和3年度介護労働実態調査 事業所における介護労働実態調査 結果報告書 ]より
http://www.kaigo-center.or.jp/report/pdf/2022r01_chousa_jigyousho_kekka.pdf
サービス案内の様子(左:代表 桑原 中左:坂本)
―高齢者向けのICT見守り機器とはどのようなものでしょうか? また、どのような効果を期待できますでしょうか?
 居室に設置したセンサーで、利用者の睡眠状態や室内の状況をリアルタイムに把握する機器であり、必要に応じてアラートを鳴らすことができます。介護現場の夜間勤務では、20人の高齢者に対して、1名の介護職員で見守ることもあります。今まではすべてのお部屋を1時間毎に巡回して様子をみていましたが、「まもる~のSHIP」を導入することで、必要なタイミングで必要な利用者だけを集中してケアすることができます。介護現場のオペレーションを最適化することで、ケアの向上につながり、利用者の心身状態が向上するとともに、職員の精神的・身体的負担を減らすことができるのです。
 経営側から見ても、事故リスクの低減と求人効果をアップさせることができます。ICTをしっかり進めているということは、法人にとって介護職員のことをしっかり考えていることの証明になります。人手不足の対策をとっていて、無理な働かせ方はしない環境であるということを求職者にアピールすることができるのです。
―機器を使用している方々は、どのような課題をお持ちだったのでしょうか?
 まず、利用者一人一人がどれだけ寝られているのか、睡眠状況の把握が難しいということです。そして、今ご利用者が寝ているか起きているかの把握ができないことも大きな課題です。これによって、夜勤者の精神的負担が非常に大きくなり、居室の巡回に時間がかかっていました。
 私も介護福祉士の資格を持っていて、施設で働いたこともあるのですが、若手の頃はとにかく不安でした。特に夜間は利用者からのSOSを察知する方法がナースコールしかなく、いつコールされるかわからないまま緊張状態で過ごさなければいけません。それが、「まもる〜のSHIP」によって、「今、この人は寝られていないな」と、わかるだけでも大きな助けになります。介護業界の人手不足を解消し、利用者のケアも充実させるためには、この夜勤者のサポートということが急務としてありました。
―実際に機器を使用したお客様から届いた声を教えてください。
 実際に、導入した施設にてアンケートを取ったところ、職場でのコミュニケーションが促進されたという結果が出ました。たとえば「互いに建設的なアドバイスをし合える職場」とするスコアが、導入前の4.03ポイントから6.19ポイントへと向上したのです。介護の仕事は人の経験に頼っているところが大きく、ベテランになると利用者が「いつもより若干、姿勢が傾いている」ことから体調が悪いことを判断するなど、わずかな変化をもとに読み解く力がつきます。ただ、それを若手に上手く伝えることができないことがあるのです。そこに「まもる〜のSHIP」があるとデータという共通言語が生まれ、ベテランの介護職員がどんな視点でケアを行っているのか、データを通してチームに説明できるようになります。若手もベテランの「背中を見て覚える」のではなく、ベテランの発言とデータをもとに、理解することができるのです。
 「まもる〜のSHIP」はこのように、現場を重視したアプリであることが強みです。1年前には50施設を訪問し、使いにくいところはないか、どんなデータが最初に出てくるとわかりやすいかなどをヒアリングして、最新のクラウドアプリに盛り込んでいます。
40代〜60代の介護職員にとって使いやすく工夫を凝らした「まもる〜のSHIP」インターフェース
―機器を導入する際に発生する、おおよその予算感を教えてください。
 購入の場合、1床:13万円~(月額利用料800円・税抜)です。レンタルの場合は、1床:月額4500円~(税抜)であり、1床からでも運用できるプランをご用意しています。介護業界の競合他社ではオープン価格がメインなのですが、当社は明瞭会計が特色であり、金額は出させていただいています。
 特別なソフトウェアを用意する必要がなく、クラウドでさまざまなものとAPI連携できるのも特徴です。スマートリモコンで外からエアコンを操作できたり、ドアセンサーで行動を察知したりできるので、拡張性はかなり高いものになります。クラウドというと通信が遅いのではないかと思われますが、1〜2秒で通知が届くので、たとえばサービス付き高齢者向け住宅の宿直制度といって、その場にはいないが何かあればすぐに駆け付けるという場面にも重宝されています。
―今後、チャレンジしていきたいことがあれば、教えてください。
 介護施設でのノウハウと実績を活かし、在宅介護向け「まもる~のONE」にも注力していきたいと思っています。「まもる~のONE」は、離れた家族をつなぐスマートケアセンサーとしてレンタルを開始しています。離れて住んでいると、健康に過ごせているか気になりますが、なかなか電話がつながらなかったり、折り返しが来ても仕事で電話に出られなかったりすることがよくありますよね。そんな不安を解消し、スマートリモコンとの技術的な連携により、離れていても「ちょっと家による」という感覚で家族のケアができる社会を実現したいと考えております。
 また、「まもる~のONE」を必要とするより多くのご家族の方々に知ってもらうため、宅食サービス、ISPサービス、ガスや電気のインフラ関連、物販をされている企業様とコラボレーションを進めています。在宅介護、施設介護の垣根を越えて、シームレスな介護を実現したいと思っております!
二次元コードで動画を読み込むだけで使い方がわかる「まもる〜のONE」。コンセントにプラグを差し込んで、センサーをマットレスの下に入れるだけと設置も簡単
「最後の親孝行」見守り介護ロボット 【まもる~の】Web限定ドラマCM
株式会社ZIPCARE ホームページ:https://zipcare.co.jp/

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