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インタビュー
北広島町/総務課DXチーム専門員
大本 賢一郎(おおもと けんいちろう)さん
持続可能なまちを目指して北広島町でDXを推進!
――北広島町では持続可能なまちづくりに向けDXを進めていると聞きました。その背景を教えてください。
 北広島町は県の北西部に位置し、中国自動車道と浜田自動車道が通る交通の要衝です。神楽や花田植といった文化が息づき、冬には本格的なスキーが楽しめる魅力ある土地ですが、一方で、県内の中山間地域で同じように抱える「人口減少」という問題に悩まされています。人手が不足し、高齢化が進むと、公共施設の整備や維持管理ができなくなったり、子育て環境が整わない、買い物をする店がないなどの生活の利便性の低下や、農地の荒廃、若者の都市部への流出、空き家・空き店舗の増加といった文化・産業の衰退が加速してしまいます。そこでこれらの課題を解決するためにデジタル技術を活用し、生活レベルを維持向上していこうと始まったのがDXの推進です。「北広島町の未来のカタチ」と名付け、令和2年度から光ファイバーによる高速通信網の整備「FTTH化事業(光ファイバー伝送路構築工事)」を進め、令和3年度には幹線光ファイバーの整備が完了、令和4年度には各戸引き込み工事の本格化、そして令和5年度には各戸引き込み工事の完了(町内全戸)を目指しています。このような環境づくりを行うとともに、具体的な取り組みを展開しているところです。
――どのような取り組みを実施されてきたか教えてください。
 まずひとつ目が、ひろしまサンドボックス事業「D-EGGS PROJECT」において、Yper株式会社様の自動配送ロボットによる中山間地域でのラストマイルインフラの構築事業として採択された、買い物支援の実証実験です。将来的に大きな課題となるであろう「買い物をする場所がない」という問題を解決するため、ユーザーが注文したものを自動配送ロボットが指定の場所に届けるという実験で、今回は自動配送ロボット「LOMBY(ロンビー)」が北広島町役場本庁・ショッピングセンターサンクス周辺をフィールドに、郵便物と生鮮食料品の同時配達を行いました。
 そして2つ目が、令和4年7~8月にかけて行われたスマート農業実証実験です。水田へ水位や水温センサーの取り付けを行い、専用アプリから確認ができるようにしました。また、こちらのアプリからは水門の開閉を行って灌水や排水ができます。農家さんはわざわざ作業をしたり見守りに行く必要がなく、人手と時間の削減につながりました。
 さらに3つ目が、道路施設点検の実証実験です。こちらは公用車などに汎用型カメラを取り付け、走行中に撮影した画像データをAIが解析して、ガードレールやカーブミラーの錆、損傷といったものを検出するという実験です。従来は職員が点検に赴いたり、町民から報告のあった場所に行ってチェックするという作業が生じていたのですが、これにより“ながら点検”が可能になりました。
自動配送ロボット
――これらの取り組みを通じて、どのような効果が得られるとお考えですか。また、今回の取り組みに関してかかった費用などを教えてください。
 いずれも実証実験なので実用化されればというところではありますが、まず買い物の実証実験においては、買い物に困る人を減らすことができると考えています。将来的に個人宅への配送というところまで広がれば素晴らしいですが、まずは役場や集会所といった人が集まる場所にまとめて配送することで、クルマの運転が難しい高齢者などが歩いて立ち寄れたり、育児中で時間のない保護者が子どもの送迎のついでに商品をピックアップして帰ることができるようになります。こちらに関しては、県の実証事業ということで費用に関しては特にかかっておりません。
 スマート農業実証実験においては、農業の担い手不足解消に大きく貢献すると感じます。耕作放棄地が増える中で、近年では農業法人といったところが広い土地を耕作しているのですが、その広さゆえ省力化は必須です。実は以前に大手ベンダーの水位・水温センサーを検討したことがあるのですが、一枚の田に50万円前後の費用がかかってしまい、導入を諦めたことがありました。今回は、ベンチャー企業の商品だったこともあり1/10程度のコストですみました。農家さんからも非常に好評の声をいただいております。
 道路設備点検の実証実験においても、同じように人手と時間の削減につながると考えています。こちらはNTTビジネスソリューションズ株式会社様との共同実験だったので、機器についての費用はかからず、カメラの取り付け費用が5万円ほどかかったかたちです。
スマート農業実証実験による自動灌水装置設置状況
――ほかに行っている取り組みや、今後チャレンジしたいことがあれば教えてください。
 本町の考えるDXは、行政の仕組みをデジタル技術で変えていく「行政DX」と、企業や大学といったところの力を借り、トライアルも含めて暮らしの利便性を高めていく「暮らしDX」の2種類があると考えています。上記で述べたような取り組みは後者で、ほかにも広島大学と連携して、健康寿命の延伸へ向けたメンタルマネージメントDX実証実験を行いました。体操教室や健康教室といったところでスマートウォッチなどのデバイスを試験的に導入し、得られた睡眠や運動などのデータや脳波測定によるストレス計測値をこころとからだの健康づくりに役立てていこうという内容です。「行政DX」については、押印の廃止と対面業務の見直しやオンラインによる行政手続きなどで、ペーパーレスや各種業務の迅速化・省力化を図っています。今年度は職員採用試験において、エントリーシートの受付をオンライン上で行いました。近い将来事前相談・証明書の取得、支払い等もすべてオンラインで済むようなサービスの提供を目指しています。今後もDX推進を加速化し、持続可能なまちづくりに貢献していきたいと思います。
広島大学とのメンタルマネージメントDX実証実験による脳波測定の様子
北広島町 ホームページ:https://www.town.kitahiroshima.lg.jp
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