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インタビュー
広島大学病院眼科/教授
木内 良明(きうち よしあき)さん
眼科の遠隔検診でへき地医療に変革!早期発見早期治療にも
木内先生、診療の様子
――広島大学病院で眼科の遠隔検診がスタートした経緯を教えてください。
 眼科医の数は、県内の中山間地域や島しょ部において非常に減少しています。中山間地域では開業医も少なく、基幹病院においても都市部から非常勤で医師が派遣され、常駐していないのが現状です。目の不安や悩みを抱える高齢者が多い地域にもかかわらず、専門医がいないという背景を受け、広島大学病院では早くから眼科の遠隔検診を試行していました。機器開発に長けた先生が複数在籍しており、専門の装置を開発製造する会社を立ち上げた先生もいるほどです。また、広島大学では海外から学びに来る学生も多く、大学で博士号まで取得した医師たちが母国に戻って相応のポジションを築き、広島大学病院と連携を取る場合があります。特に日本に対して親和性を持っているインドネシアとは共同で色々なプロジェクトを進めており、その中のひとつに遠隔診療の取り組みがあります。海を越えての遠隔診療のノウハウ、さらに機器開発などの要素が合わさり、満を持して現場での遠隔検診が試験的に始まりました。
広島大学病院外観
――眼科の遠隔検診がどのようなものか教えてください。
 手持ちのスマートフォンに専用のアタッチメントを装着して、内蔵カメラで撮影をします。撮った目の写真をクラウドにあげて、広島大学病院の医師が画像解析を行います。現在現場で用いられているのは「モバイルスリットランプMS1」という機器で、そのほかにも2種類の機器があります。MS1は高輝度LEDを採用しており、広範囲を照明することができます。額当てと頬当ての2箇所で保持できるため、安定した撮影が可能です。先端にはローラーがついており、眼球の端からスキャンしながら動画撮影も行えます。ただし、目の奥までを撮影できるような機器ではないため、病のあるなしを判別できる程度にとどまります。実際に、遠隔検診で疾患が見つかったという報告もされています。
モバイルスリットランプMS1
――診察に関わる人や患者にとって、どのようなメリットがあるのでしょうか。また、課題はどういった点ですか。
 MS1の最大の特徴は、医師ではない看護師や保健師でも操作が可能なことです。これにより、現場での人員不足が大いに解消されます。県内では、安芸太田病院や似島の診療所、神石高原町の診療所などで実証実験が行われています。今まで診察の機会が得られなかったことで遠方まで赴いていた患者は、近隣で診察を受けられるのがメリットだと思います。疾患があるかないかが早期にわかれば早期治療につながるし、予防医療の充実も図れます。将来的には取り込んだ画像をAIが自動診断するようになれば、さらに効率的なシステムになりますね。MS1を含め、開発中の機器に関しても、広範囲の撮影が難しい、データの画質が良くない、スマートフォンのバッテリーがもたないなどの課題があるので、このあたりは今後の進歩に期待したいところです。
スマホを使用した遠隔診療で集めたデータを精査する様子
――今後、医療現場で導入されたらいいと感じるシステムなどがあれば教えてください。
 個人的な意見にはなりますが、病院の中で取り入れたいものとしては顔認証のシステムです。入院患者はバーコードリーダーを腕に装着して、それを機械で読み取る、あるいは患者自身に氏名を述べてもらって本人確認をする場合があります。手術の際などは何度も確認をしたりするので、精神的不安を抱えている患者にとっては、その作業がわずらわしく感じることもあるようです。また、就寝中に確認作業をするのがはばかられる場合もあるので、顔認証を取り入れることができれば、双方の負担が減るのではないかと思います。さらに電子カルテが導入されて久しいですが、カルテにはデータ記入する部分とテキスト記入する部分があり、このテキスト部分をある程度テンプレート化すれば、もっとスピーディーに情報の出し入れができるのかなと感じます。この先も、医療従事者と患者の負担を減らすようなシステムが導入され、すべての人に優しい医療現場が構築されることを願います。
眼科カンファレンスの様子
広島大学病院 ホームページ:https://www.hiroshima-u.ac.jp/hosp

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