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インタビュー
株式会社日野折箱店/代表取締役
日野 貴文(ひの たかふみ)さん
新機材の導入で、時代のニーズに合った折箱を提供!
折箱商品イメージ写真
――折箱事業の詳細と、会社の変遷について教えてください。
 昭和23年創業の弊社は、食品容器となる折箱を長く手掛けてきました。創業当初はアイスキャンディーの棒づくりからスタートし、駅弁の折箱や婚礼・法要の仕出し弁当用の折箱製造に事業が広がったと聞いております。しかし、時代の流れと共に地域で行う婚礼・法要の仕出し弁当のニーズが減っていき、折箱の受注が激減しました。代々受け継ぐ会社をつぶしてはならないと、割り箸や袋といった飲食業界で必要とされる包装資材の卸売りに事業内容をシフトしました。この事業で何とか経営を踏ん張ってきましたが、業界内での価格競争が激化し、安定した受注が難しくなってきたのです。同時に、私たちが折箱事業をストップしてしまったのと同様に、全国でも折箱事業を営む会社が次々と廃業しているという話を耳にしました。弊社は「日野折箱店」という、事業内容が一目でわかる社名を掲げているものですから、時々忘れた頃に折箱製造の依頼が入っていたのです。「もしかすると、全国で廃業が続いている今こそ折箱事業に可能性があるのかもしれない」。そう思い直し、折箱事業の復活を考えるようになりました。
システム従業員が折箱を折る様子
――新しい機材を導入するようになった経緯を教えてください。
 折箱事業を復活させるというビジョンはあったのですが、会社に残っていたのは時代に合わないような古い製造機械が1台のみ。大きなホッチキスで箱を留める、昔ながらの製法のみ可能な機械で、現在世の中に流通している折箱の製法ではありませんでした。そんな時、地元の商工会から小規模事業者活性化補助金の話を教えてもらいました。リスタートするのにいいかもしれないと考え、必要書類を整えて応募しました。ありがたいことに審査を無事通過し、給付された補助金で、箱のマチ部分を押さえる折箱マチ圧着機、接着作業を行うローラーコーター、接着剤を流し込む溝糊着機の3台の製造機を導入し、販路拡大のためのホームページも開設しました。これが平成25年のことで、その後も平成26年に材料をカットする小型断裁機を、平成28年には箱の素材を融着させる折箱融着機や、接着後の木製折箱を押さえる木製折箱角圧着機、接着作業を行うホットメルトガンなどを導入し、お客様の多様なニーズに応えられるような製造体制を構築していきました。
――新機材を導入したことで、折箱事業はどのように活性化していきましたか。
 はじめはまだまだ包装資材の事業に頼っているような状況でしたが、ホームページを見たお客様からポツポツと折箱の依頼が入るようになりました。全国で同業社の廃業が続いていたと前述した通り、「近くに頼める業者がいないから」と、関東や東海といった遠方からもお問合せをいただき驚きましたね。ホームページ内には製作例をいくつか載せているのですが、弊社の強みになったのはオリジナリティを出せることでした。例えば家のかたちやクルマのかたちなど、他では扱っていないような折箱をつくることができ、同業他社と差別化を図ることができました。飲食店からテイクアウト用に「ほかの店にないデザインで頼みたい」という希望があったり、企業がノベルティとして使うために「会社の事業内容が伝わるようなかたちにしてほしい」という要望をいただいたりしました。もちろん、その形状を可能にしたのは、用意していた製造機械のおかげです。見た目もきれいな品をスピーディーに納品することができ、お客様に大変喜ばれました。いつしか折箱事業は包装資材の事業に大きく差をつけ会社の柱となりました。
受発注システム「CO-NECT」管理画面
――ほかにも導入したシステムなどはありますか。また、今後DXを進めていきたいと考えている会社へメッセージをお願いします。
 折箱事業が軌道に乗ったことで、衛生的に製造ができるよう新社屋を建築しました。さらに従業員を雇い、生産性を上げていきました。平成30年には業務の効率化と収益性の向上を目的として、生産管理システムを導入しました。この時は最初に福山市の産業コーディネーターに相談したのですが、「システムを導入するのもいいけど、まずはアナログで自社の生産管理をしたほうがいいと思いますよ。そうでないと、システムにかけるお金をドブに捨てるようなものです」とアドバイスをいただき、大変勉強になりました。そこで表計算ソフトを使い、どんな商品の依頼を受け、どういった手順で製作を行い、どのような梱包を行ったか、自分で表をつくっていきました。今ではこれが生産管理システムに反映され、取り出したい情報を誰でもすぐに取り出せるようになったので、圧倒的に便利になりました。さらに現在は受発注システム「CO-NECT」も活用しており、発注するお客様はECサイトで買い物をするようなかたちで簡単に注文ができ、受注する側は自社の商品を発注しやすいようカスタマイズできるので、受注する方も発注する方も負担が減りました。これからITを活用しようと考えている方は、アナログとデジタルの良さを使い分けながら、少しずつ導入していくのがいいのかなと思います。私自身、色々な会社の話を聞いたり見学をさせていただいたりして、機材やシステムの導入を進めてきたので、まずは参考になりそうな身近な会社に相談するといいかもしれません。
作業テーブルと機材を組み合わせ技術負担を軽減
株式会社日野折箱店 ホームページhttps://hinooribakoten.com/
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