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インタビュー
高木デルタ化工株式会社/代表取締役
高木 聰毅(たかき さとよし)さん
AIを使った自動検査システムで快適な労働環境を実現!
――AIを活用した自動検査装置開発のきっかけを教えてください。
  私たちの会社は、おもにプラスチック射出成形での自動車部品の生産を行っています。二次下請けではありますが、主要お取引先のマツダ様の業績が好調だったのを背景に、私たちのつくる自動車部品の数も相当量増えていきました。とてもありがたい思いである一方、部品の検査を行う作業者たちの負担は重く、何とかできないかという思いがありました。部品の検査は1人で1000~1500個の中から、1つあるかないかくらいの不良品を探す作業で、ベテランでも8時間程度の時間を要し、目にも身体にも大きな負担がかかります。また、社内で不良品が見つかればまだいいのですが、万一外に出てしまうとお客様にご迷惑をかけてしまう上、回収の時間も費用もかかり、作業者の精神的な負担も発生します。そういったヒューマンエラーを防ぐために、自社で一度検査装置を開発したのですが、射出成形機の振動によってうまく作動させることができず、開発を断念しました。そんな時に、ちょうど近畿大学工学部の竹田史章先生の講演会に参加する機会があり、AIを用いれば人的な負担をも下げる装置の開発を進めることが可能なのではないかと考え、竹田先生にすぐに相談。ご了承いただき、自動検査装置の開発がスタートしました。

――自動検査装置がどのようなものかを教えてください。
 AIを利用した自動検査システムで、「TDis」(Takaki Delta inspection system)と名付けています。AIによる画像診断で部品の良品と不良品を判断、さらにその画像と検査結果の保存機能で、予期せぬイレギュラー時の原因究明も行うことができます。特徴としては最大4台のカメラで立体のさまざまな角度や場所をチェックし、最大10か所の検査を同時に実行し,検査結果はまとめて保存することが可能で、検査、学習、検査結果ログの管理を一括して行え、誰でも簡単に操作ができます。ラベルプリンターとリンクさせ、TDis画面上で製品名や入り数を設定し、検査結果ログ番号と合わせて自動プリントさせることも可能です。精度が非常に高く、不良品であれば100%、良品であれば90%以上(良品のうち数%は不良品と判断してしまう)の確率で部品の判別をします。カメラや照明を変えることで色々な自動車部品の検査ができるので汎用性が高く、そのあたりが従来の検査装置と違う点かもしれません。検査現場でこれまであがってきた多様な困りごとの声を反映してできたものなので、非常に現場に即した装置だと思っています。
「TDis」の詳細、またその特徴
「TDis」導入のメリット、詳細資料
――開発にあたってのご苦労はありましたか。
 開発は竹田先生の持っている知見や技術を活用してというかたちだったのですが、それを使いこなせるベーシックな知識を私たちのほうで持ち合わせていなかったのが一番の課題でした。そこは先生のお力を借りてご指導いただき、トライ&エラーで設置や活用法を学んでいきました。開発がスタートしてから1年半は先がまったく見えないような状況で、活用できそうだと判明したのが開発から2年弱くらいの頃でした。費用もそれなりにかかりましたが、それまでマツダ様の好調を受けて弊社も業績が右肩上がりだったため、投資に十分な額を費やすことができました。また実際の活用にあたっては、検査する部品によりカメラや照明などの位置が異なってくるので、微調整するのが難儀でした。取り付け方によってはAIが正確に読み込まないので、そこは試行錯誤の繰り返しでしたね。
TDisを使用してプラスチック製品を検査している様子
――実際に使ってみての感想や、今後の展望を聞かせてください。
 とにかく便利で快適になったの一言です。2019年の春に導入してから現時点(2022年11月現在)で178万個を検査しましたが、まだ一度も不良品の漏れを出したことがなく、その精度の高さに驚いています。当初、竹田先生には「7割程度判別できるようになったらうれしい、残り3割は従来通りのやり方で検査を行うので」とお伝えしていましたが、想像していた以上の完成度の高さです。実際に自動検査装置を用いるようになってからは、検査にかかる時間が3分の1程度になり、作業者の身体的・精神的負担が大いに軽減され、同時に別の作業をすることもできるようになりました。点検などのためにいったん装置をはずそうとすると、社員のほうから「それがないと困るんですけど、いつ戻せますか」と聞かれるようになったほどで、今では6ラインで活用しています。現在は自社での使用が中心ですが、同業者で興味を持ってくれている方もいるので、今後は外販も考えています。製造業は現在も、これからももっと顕著に人手不足が叫ばれるであろう業界なので、自動検査装置を用いることで、働きやすい環境や、継続して働いてもらえるような会社を目指していきたいですね。

高木デルタ化工株式会社 ホームページ:https://www.takakidelta.co.jp

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