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インタビュー
株式会社マエダハウジング/代表取締役
前田 政登己(まえだ まさとみ)さん
業務に対する意識を変えて生産性を向上!暮らしを豊かに
――DXに取り組むようになったきっかけを教えてください。
 就業規則を14年前に作り直した際、「毎年休みを1日ずつ増やそう」「時間外労働を減らそう」「毎年昇給できるようにしよう」というような理想を、あらためて掲げました。その理想を実現するためにはどうしたらいいか社員と一緒に考えたところ「生産性を上げるしかない」という結論に至りました。中小企業の生産性向上は「人材育成×IT」と思いデジタルシフトをより一層進めました。指標を掲げ、行動に移す中で動きが加速したのが「働き方改革」です。2016年に広島県のコンサルティングモデル事業に選ばれた弊社は、具体的な数値目標を出して時間外労働の削減や有給取得率の増加に成功。その甲斐あってか、2021年4月には働きがいのある会社研究所(GPTW:Grate Place to Work)の「働きがいのある会社」に広島県で初めて認定されました。各々が経験と勘に頼るような仕事の仕方ではなく、業務を標準化、あるいは見える化して効率性を上げることが大事で、ひいてはその手段としてDXが必須だと感じました。
オンラインでの方針発表会の様子
――具体的にどのようなことをされているのでしょうか。
 まず、「営業DX」「総務経理DX」「マネジメントDX」「現場DX」の4つに分け、それぞれできるところからスタートしました。営業のDXはオンライン打ち合わせや電子契約、VR展示場、無人現場見学などを実施しました。オンライン打ち合わせや電子契約については、お客様がスムーズに操作するためには、私たちがいかに上手くホストを務められるかが重要なため、社内で研修も重ねました。総務経理DXにおいてはRPAを導入して単純作業をシステム化したり、マネジメントDXでは自社で開発した「デジタル上司 毛利元就 ※1」がチェックする仕組みを作り、BIツール ※2による経営情報の見える化も行いました。現場のDXは360°カメラやウェアラブルカメラによる施工管理、遠隔検査などを導入しました。現場においては当初ロボットを導入して、現場監督が遠隔で指示を出すという方法を試みていましたが、ロボットが垂木を乗り越えられない、二階に上がれないなどの課題があり、360°カメラに切り替えました。以前から取り組んでいたことがコロナ禍で一気に加速した状況です。

※1 デジタル上司 毛利元就…勤怠管理システムでのタイムカードの打刻忘れなどによるエラーや基幹システムへの入力漏れなどをチェックしスタッフに指摘する作業ができるRPAロボットで,チャットツールを使ってアラートを出します。広島ゆかりの人物の名前を使って擬人化することで、スタッフの注意を引きつけることと管理者や担当スタッフがエラーを調査してアラートを出す作業に充てる時間とストレスを軽減し、マネジメントの生産性を高めることを目的としてます。手作業だと1回1~2時間かかっていたチェックとアラート発信作業に充てていた時間を削減することができてます。

※2 BIツール…社内の幾つかのシステムアプリケーション内にある経営情報を一つのダッシュボードにまとめて分析し可視化することで経営の意思決定のスピードアップを図ることができます。マエダハウジングでは売上、利益の進捗分析や生産性の分析などに活用するために開発中です。
社内オンライン会議の様子
――これらの取り組みにより、どのような効果が生まれましたか。
 一番は、「現場監督は現場に行くもの」という意識を変えられたことでしょうか。2020年から、国土交通省が「i-Construction」を掲げ「建築現場でICTを活用しよう」という取り組みを進めています。この取り組みにも大いに関係するのですが、現場監督が最も時間を割くのは、実は移動時間なんです。現場で安全管理や施工管理を行って、会社に戻ってくる。けれど、これが360°カメラを活用することで移動なしに行えれば、本来20回現場に赴いていたのが半分とかそれ以下に抑えられるわけです。もちろん、同じように現場に行っていた営業やコーディネーターについても同様のことが言えます。移動に割いていた時間が空くことでほかの作業ができたり、3軒同時に担当していた現場を5軒に増やすことができたりと、まさに生産性の向上が叶えられますし,運転時間の半減によりCO2や交通事故の削減、渋滞の低減にもつながるのではないかと思っています。
 また,カメラで現場を撮影することで、情報共有やデータ保存も可能になります。お客様は、自分の家の工事が現在どのように進んでいるのかを見ることができるし、床下や壁の中など完成してからでは見えなくなってしまう部分まで記録として残るので、安心につながります。その他にもコロナ禍で加速したテレワークにおいては、育児や家事と並行でき、ワークライフバランスが向上したという声が寄せられています。
 今後力を入れたいのは、すでに取り入れているマネジメントDX。例えば提出物などの催促を上司が部下に促すと軋轢が生まれがちですが、デジタル上司がチャットで促せば、誰も嫌な思いをしませんよね。円滑なコミュニケーションに一役買っていると実感しているので、これからもより強化していきたいと思います。
建築現場の見える化「360°カメラ」
――今後DXを進めていきたいと考えている会社へ、アドバイスがあればお願いします。
 DXには段階があり、例えばロボットなどのデジタルツールを取り入れただけだとデジタイゼーション(業務のデジタル化)の域だと思うんです。そして、紙を廃止してRPAに切り替えたなどの取り組みはデジタライゼーション(ビジネスモデルそのものをITの活用により変革させること)。DXはこれらを経て、「ITを最大限使い、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」だと認識しています。この認識ができておらず、デジタル化のみをDXと捉えている場合もあるので、まずはそこから意識づけできたらいいのかなと思います。そして、日本における少子高齢化は皆さんご存知の通りで、“人材不足待ったなし”です。世界的に見ても生産性が低い国になってしまった日本で、DXはこれらを解消する唯一の術だと考えています。DXを進めるにあたり、阻害因子となるのは、従来のやり方に固執する固定観念だったり先入観だったりするので、まずはやってみて、その便利さや快適さを実感できるといいですね。弊社が取り入れた360°カメラやロボットについては、通信費を含めても月に数万円程度の費用です。購入してからは浸透までに時間がかかるので、導入にかかる時間3割・運用徹底にかかる時間7割ぐらいだと心得ておくといいかもしれません。もちろん、これからも自社で適切なDXを進め、ワークライフバランスが充実した社員の豊かな生活、そして広島県全体の笑顔あふれる幸せな暮らしに貢献していきたいと思います。
株式会社マエダハウジング ホームページ:https://www.maedahousing.co.jp

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