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インタビュー
サッポロビール株式会社/西日本業務部中四国グループグループリーダー
矢野 徹(やの とおる)さん
時代に対応するIT人財を育成!「全社員DX人財化」
――サッポロホールディングスで「全社員DX人財化」を推進するようになった経緯を教えてください。
 私たちの業界に限らず、今後社会全体で、AIをはじめとする最新技術の知識を持つ「DX・IT人財」が圧倒的に不足すると言われています。ビジネスで使うIT技術は汎用化し、ウェブやアプリを誰でも開発できるようになるであろう未来で、AIやIoTにおいて必要な知識・技術を持って課題解決できる人財育成は急務です。こうした人材を外部の機関に任せて育成することも可能ですが、グループ全体の根本からの業務改革となれば、サッポロホールディングスの商習慣を把握しておくことは必要不可欠です。そこで我々は内部の社員教育を徹底し、グループ約4000人の全社員がその大事な人財となれるような「全社員DX人財化」を推進することにしました。例えば、英語が社内の共通言語だという会社があるように、すべての社員が同じレベルでDXへの基本理解を持つことが重要だと考えています。
DX化へ向けた基礎作りの計画年表
――「全社員DX人財化」の具体的な内容を教えてください。
 このプログラムは、「全社員ステップ」「サポーターステップ」「リーダーステップ」の3段階に分かれています。まず全社員ステップにおいて外部機関の教育プログラムを活用した基礎的なeラーニングを受講してもらい、DX・ITについて理解してもらいます。そこから公募による選定を経て、500名(実際は希望者600名全員を選定)規模のDX・IT推進サポーターを育成するため,さらに専門的なeラーニングの受講などを実施しました。最終段階のリーダーステップでは、さらに150名規模に数を絞り、「DXビジネスデザイナー」「DXテクニカルプランナー」「ITテクニカルプランナー」の3つに分かれて専門研修を実施しました。現在はこの150名のリーダーたちが、普段の業務の中で感じる課題をどうやったら解決できるか考え、具体的な企画書を提出し、業務改革に向き合っています。全社員DX人財化は今後も継続的に進めていく方針で、DX・IT推進リーダーが中心になって自部門の案件や、ひいては全社横断プロジェクトに参画してDX・ITの推進を実行していく計画です。
全社員DX人財化のプログラム内容
――このプログラムを推進することで、社内に変化はありましたか。また、関連して進めている取り組みがあれば教えてください。
 実際にプログラムを受講した社員からは「素晴らしい取り組みだと感じた。サポーターステップまで全社員が受講できると理想だと思う」という声や、「必要性、重要性を痛感したので、今後も継続して挑戦したい」という感想が寄せられています。リーダーたちは業務の中で課題を見つける目が養えたようで、例えば当たり前のように行っていた単純作業がAIでもっと簡略化できるようになるのではないかと、つねに新しい視点で業務を捉えられるようになりました。
 サッポロビールでは現場のDX推進の先駆けとして、RTD商品(サワー類や酎ハイ)開発スキームのDXに向け、AIシステム「N-Wing★」の本格実装が進んでいます。これは、商品開発において原料の配合などを人の手からAIへと切り替えたもので、これまでの原料情報やレシピをAIに学習させ、必要な割合を予測させます。人間では思い浮かばないような配合が創出されることも確認できており、今後さらにレシピの精度が上がるのではと期待されています。社員は必ず退職や異動がありますから、属人化していたものを機械にまかせることで、業務の効率が上がったり、ひいては皆が快適に勤務できるような「働き方改革」に付随する環境整備につながるのではないかと考えています。そのほかにも、生産部ではAIを使った在庫管理や通常品の売上予測を運用、営業部では発注書や請求書のペーパーレス化、運転記録管理の電子化など、細かい部分での業務の効率化が行われています。
――これから挑戦したいと考えていることや、DXについての思いを聞かせてください。
 今は諸々の取り組みを進める中で、変化を実感している最中です。先日、ボージョレ・ヌーボーの解禁があったのですが、例年この時期は大変忙しくしております。受注・発注は従来であれば営業社員が数を取りまとめて営業サポーターに渡し、サポーターがその数をシステムに打ち込んで発注するという流れだったのですが、今年からクラウドサービスを使うことにしました。これにより、営業社員が直接必要な情報を打ち込めば翌日には必要数の商品がそろっているという状況を作り出すことができ、サポーターの業務は不要になりました。そうやって色々なことを進めていけば、皆の残業時間が減ったり、労働環境の改革につながると思います。まずは社員の意識醸成を図り、会社も社員もより良い方向へ変わっていけばいいなと考えています。DXを通じて、会社に“やらされる”のではなく、一人一人の行動が変わるきっかけになり、それが「自律した働き方」や「ワークライフバランスが充実した働き方」につながればなと考えております。ただ単に業務を効率化するということでなく、高い成果も出しながら、創出された時間で自己研鑽や自己啓発に励み、仕事だけではない豊かな時間を育んで、社員皆の幸せが生まれればと思っています。
全社員DX人財化を通して、目指す姿
サッポロビール株式会社 ホームページ:https://www.sapporobeer.jp
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