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インタビュー
広島銀行/決済サービス部長 兼 ひろぎんホールディングス デジタルイノベーション部
デジタル戦略グループ長
瀬尾 浩一(せお こういち)さん
使う人にも、お店にも喜ばれる、地域に愛されるペイメント「こいPay」
―世の中に数多くのキャッシュレス決済がある中で、独自のキャッシュレス決済「こいPay」に取り組まれたきっかけや目的について教えてください。
 キャッシュレス決済はコロナ禍もあって広く普及し、より便利で、よりお得なサービスが求められるようになっています。その中で、利用金額はクレジットカードが中心でも、利用シーンなどによってキャッシュレス決済の使い分けをしている方が多いですよね。特にスマートフォンの普及が進むなかで、アプリを活用したスマホ決済は、利用者にとっても店舗にとってもさまざまなメリットがあると考え、当行でもスマホ決済に取り組むに至りました。
 「こいPay」という独自サービスに取り組んだ目的は大きく2点あります。1点目はユーザー側の観点で、地元のお客さまの生計面での中心の一つは銀行口座だと思います。これをより便利に、お得に活用してもらうために、お客さまの生活スタイルやニーズに応じた一つのラインナップとしてご提供したいということです。2点目は店舗側の観点ですが、低コストで導入可能なコード決済を活用し、より地域に密着した取り組みを強化していきたいと考えました。大手とは異なる柔軟で小回りの利くサービスとして、例えば地域のイベントなどにも短納期で対応が可能です。
「こいpay」が利用できる地域イベントの様子
―どのようなメリットがあるのか教えてください。どこで使えるのでしょうか?
 スマホで決済するのですが、よくあるチャージ式ではなく即時払い式で、口座から直接引き落とされます。また、利用すると常時2%が還元されます。2%は全国のペイメントの中でもかなりの高還元率で、かつポイントではなく現金で口座に還元しているので、メリットを感じていただけると思います。バーコードを読み取ったり表示したりできるコード決済のサービスなので、加盟店側は、クレジットカードを使う場合は専用の端末を入れる必要がありますが、「こいPay」であれば二次元コードさえ置いておけば対応できるので導入は手軽です。2023年2月末現在で約54万店舗と、コンビニをはじめ全国で幅広くご利用いただいています。
常時2%が還元される「こいpay」
―その他、「こいPay」ならではの良さを教えてください。
 地域に根差したものでありたいと思っていますので、キャンペーンなどで地場のお取引先さまとのさまざまな企画を行っています。たとえば、地元プロスポーツチームとのコラボレーションでは、「こいPay」を使うとグッズや飲食が割引になるキャンペーンを実施して、大変好評をいただくとともに、販売促進にも貢献できました。こうした地域ならではの取り組みこそが「こいPay」の存在意義の一つであると思っています。
 また、販売だけでなく、キャッシュレス募金にも対応しています。地元のチャリティイベントでは、特設サイトに二次元コードを掲出し、自宅にいながら募金ができるよう工夫しました。
 2022年10月からは、「ことら送金」という新機能を加えました。ユーザー同士であれば銀行名や支店名、口座番号も不要で、携帯電話番号だけで振込手数料無料で送金できます。
新機能「ことら送金」で手軽に仕送りができるように
―「こいPay」を活用して今後検討している施策や方針などがあれば、教えてください。
 今後も地域活性化に向けた、地方銀行ならではの取り組みを継続していきたいですね。50%や20%の期間限定の大規模還元も定期的に行っていますが、こうした施策で新規ユーザーを増やし、常時2%還元や送金機能で定着してもらい、そして地域のイベントや加盟店に送客する。このような好循環が生み出せればと思っています。並行してアプリの利便性向上も行っていくべきでしょう。また、最近では「こいPay」のアカウントでツイッターを始め、現在約3万人にフォローいただいています。たとえば、ツイッター上で地元飲食店さまをご紹介したり、フォロワー数を増やすお手伝いを行っています。我々のフォロワーを増やすほど、地域企業さまのお手伝いができる力も強くなりますので、今後も力を入れていきたいですね。
 地場のお取引先や自治体のキャッシュレス基盤の構築のお手伝いもしていきたいと思っています。たとえば地域の商店街で何かしたいというときも、キャッシュレスシステムをゼロからつくるのは難しいですよね。それを裏で支えられる存在になりたいと思っています。

 私たちとしては、「こいPay」を“広島銀行のサービス”ではなく、“地域のサービス”にしたいと考えています。だから名称もひろぎんペイではないし、当行カラーの青を使用していません。地域で共創できる、地域のペイメントでありたいというのが今後の目標です。
―その他、DXに関して実施しているサービス等あれば教えてください。
 ひろぎんグループでは「あらゆる業務・施策へのDX活用」および「グループ全社・全員の主体的取組と意識変革」を基本方針に、さまざまなDX化を行っています。たとえば、クレジットカードの解約受付時には、AIボイスボットを使うことで、来店不要・待ち時間を解消し、受付業務の変革を実現しています。大きなところでは、法人向けのビジネスポータルを立ち上げました。各種通知機能やオンライン融資など、お客さまの「今」の課題を解決できるコンテンツを順次追加する予定です。ひろぎんアプリに関しても、ますます便利な機能拡充を実施する予定です。住宅ローンのウェブ仮申込と電子契約、ウェブ来店予約サービスなどもご提供しています。また、基礎整備としてはAI分析モデルを内製化し、データ利活用の高度化を目指すためにも、IT/デジタル人材の採用を始めています。
 私たちひろぎんホールディングスデジタルイノベーション部は、各部から施策のアイデアが上がってきやすいような仕組みを整え、7年の間に5回ほどの組織替えを経験しながら議論を続けています。地方銀行には変革という文化が足りていなかった部分もありますので、「こいPay」のように頭で考えるだけではなく、まずはやってみて、お客さまの反応を見ながら進化させていくという組織文化をつくっていきたいですね。
―今後、ひろぎんホールディングスとしてDXに関してどのような取り組みを行って行く予定でしょうか? 併せて、今後どのような未来を創って行く予定ですか?
 あらゆる業務や施策へのDXの活用の中でも特に力を入れているのが「攻めのデジタル化」、デジタライゼーションによって、基本業務のプロセスに変革をもたらし、お客さまにより良いサービスをご提供しながら、組織のビジネスモデルを改善していくことです。2022年の10月に経済産業省の「DX認定」を取得したことも一つのきっかけになりました。DXは業務効率化や生産性向上の有効な手段ですが、それに加えて、地域社会やお客さまの価値向上に資するサービスを生み出すために不可欠だと認識しています。
 また、地域総合サービスグループとして、地域全体のDX推進に積極的に取り組んでいきたいですね。人でないとサポートできないことも必ずあると思うので、デジタルとリアルをうまく融合させながら、地域のお客さまのより良い未来のために尽力してまいります。
ひろぎんホールディングス本社ビル外観の様子
ひろぎんホールディングス ホームページ:https://www.hirogin-hd.co.jp
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