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インタビュー
株式会社内海機械/代表取締役
内海 和浩(うつみ かずひろ)さん
AI分析データを用いたシステムで生産性が向上! 「ぶっちぎりの超短納期」で売上は2年で1.75倍に
―マシニングセンターや数値制御旋盤の稼働状況の把握にAIを導入しようと思ったきっかけを教えてください。
 6、7年前に、機械の稼働率を上げるために、IoTで製造工程の見える化をしようと思ったのが始まりです。機械をすべてLANでつなぎ、稼働率をディスプレイで見えるようにしました。私が外にいても、スマートフォンで稼働率のガントチャートを見られるようにしたのです。そうすることで、生産性が30%向上し、収益率の向上やそれまで以上の短納期化が実現しました。稼働率を数値化することで、現場の職人に「もっと数字を上げたい」という心理が働いて、PDCAサイクルを工夫するようになったのです。それによって職人たちの技能も向上し、国家技能検定に合格した職人も何人かいました。業務効率化によって一度は高収益モデルができたのですが、そのうちに頭打ちになり、伸びなくなったのです。
 そこで、地元の府中市の産官学連携により、近畿大学とAIで共同研究をするというお話に乗らせていただきました。当社に過去5年ほどのIoTのデータがあったので、これが使える、というお話になったのです。

※マシニングセンター…プログラムで動く加工用の機械
※ガントチャート…作業工程や進捗状況を管理する為に使用される図表
設備機械稼働状況のリアルタイムモニター
リアルタイムモニターを活用し、「機械別停止情報」の確認が可能
―産官学連携では、どのような研究をされたのでしょうか。
 AIで製造工程の時間のロスを分析しました。すると、機械の準備をする「段取りロス」が一番大きいということがわかったのです。そこで、段取りにかかる正規の時間を調べ、今の段取りが正規の時間なのか、それより遅いのか、AIに判定してもらうことにしたのです。この研究結果を、今まであるIoTシステムに組み込み、段取りが遅ければチャートが赤く点滅したり、パトライト(回転灯)を回したりして職人に知らせるようにしました。私のスマートフォンにも遅れたことが通知されるのです。導入後2カ月で稼働率がさらに10%ほど上がったのですが、あまりに急激に上がったため、まだ本当のデータなのか、最初だから気合が入っただけなのかを見極め中です。
段取りが遅ければパトライト(回転灯)が回り職人に知らせるIoTシステム
―導入した際の費用感について、活用した補助金も含めて教えてください。
 最初にIoTで稼働率を見える化したときにかかった費用は500万円くらいだったと思います。そのときは、モノづくり補助金で全体の3分の2をまかなうことができました。産官学連携の研究はほとんど持ち出しの費用はありません。AIの分析データをIoTのシステムに組み込む際には200万円弱かかりましたが、IT導入補助金を50万円ほど利用することができました。大変だったのはやはり費用面で、各段階とも、補助金がなければできませんでしたね。最初はわかりませんでしたが、自社でできる範囲内で取り組みを進めていくことで、次のステップ、さらにその次のステップへと、別の補助金を得て進めることができたのです。ある程度の費用がかかるのはしかたがないことですが、やればすぐ元が取れるということもわかりました。高収益モデルになり、事業構造が大きく変わったのです。もともと多能工づくりや5Sによるロスをなくすことで「超短納期」を専門とした会社でしたが、IoTによって拍車がかかり、2年前に「ぶっちぎりの超短納期」を商標登録しました。
―導入後、社員の方からはどのような声が寄せられましたか。
 AIを導入したことで、全国の企業や大学が見学に来るようになったんですよね。テレビや新聞で取り上げていただいたのも大きかったと思います。お客様に直接ほめていただくことで、社員の達成感や誇りとなり、社内が活気づいて「もっと頑張ろう」という意欲につながりました。それによって収益が上がり、補助金によって機械も新しくするなど、良い循環が生まれています。職人たちは、「自分たちがやってきたことは、間違いなく良かった」という自信を得ているようです。
―ちなみに、製造工程のロスを可視化することで、どのくらいの時間のロスを発見できたのでしょうか。
 時間でいえば何分というレベルですが、1秒、1歩でも、年間で見れば大きく変わってきます。節約できた時間は、そのままさらなる超短納期化につなげています。稼働率が上がったというだけでなく、注目されたということもあって、売上は2年前と比べて1.75倍に伸び、取引先の数もここ2年で倍になりました。超短納期では他社に負けることはありません。
―今後、チャレンジしたいことについて教えてください。
 現場のDXは現時点でできるところまではできたと思うので、今は事務のDXを進めています。RPAによるルーティンワークの自動化や、グーグルワークスペースを使ったスムーズな社内伝達、MoneyForwardによるクラウド会計など、IT導入補助金を使って考えられるものはすべて導入しています。やはり現場で大きく効果が出たため、事務のほうでも導入することで、会社としてさらに成長できると思っています。

※RPA…デスクワークをAIなどの技術を備えたソフトウェアのロボットが代行・自動化してくれる事
社内伝達をスムーズにするために導入したGoogle Workspaceのメール画面
株式会社内海機械 ホームーページ:https://www.utsumi-kikai.co.jp
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