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インタビュー
株式会社太陽都市クリーナー/代表取締役
森山 直洋(もりやま なおひろ)さん
DXは業務の効率化だけでなく、社員の積極性も引き出してくれました!
――般廃棄物の収集・運搬をメイン事業とする御社で、DXに踏み切ったのはなぜですか?
 一番大きいきっかけになったのは、2018年の西日本豪雨災害です。当社は被災しませんでしたが、近隣では床下・床上浸水の被害を受けた方もおられました。当時、当社のサーバーは社内にあり、伝票もいわゆる複写伝票を使うなど紙で管理していることが多かったので、もし被災していたら業務への影響は甚大だったでしょう。特に、私たちの業界は災害廃棄物の回収なども手がけており、有事のときこそ力を発揮しなければならないため、災害時を想定して備えておく必要があると感じたのです。
導入クラウド一覧
――具体的にどのようなツールを導入されましたか?
 会計ソフトのMoneyForwardとChatwork、GoogleWorkspaceなどです。MoneyForwardの導入前は、1ヵ月分の手書きの会計伝票を会計事務所に持参し、約1ヵ月後に月次の試算表が上がってきましたが、なかなか経営には活用できていませんでした。それが、クラウド化することでタイムラグもなくなり、リアルタイムで会社の状況が数字でつかめるようになりました。さらに、データで管理することで、例えば昨年の同時期と比較してどの項目が変わっているのかも一目瞭然なので、経営者としては経営判断のスピードアップにもつながっていると実感しています。このMoneyForwardをベースにしながら連携できるツールとしてAirペイも活用しています。例えば、現場で現金を徴収したり、PayPayやクレジットカードなどキャッシュレス決済があったりしたとき、端末で入力するとMoneyForwardに即座に反映します。お金を扱う場面でヒューマンエラーが起きないよう、できるだけ自動化しています。
――業務が大きく変わったと感じたツールはありますか?
 一番大きく変わったと感じるのはChatworkの導入でした。私たちの仕事の性質上、朝から現場に出ていって夕方まで帰ってこないことが多いため、事務所と現場の連絡のやり取りが重要になります。以前は電話連絡が中心のため、伝達ミス・伝達漏れのためにお客様に迷惑をかけてしまうことがありました。そうすると、連絡をこまめにできる、フットワークの軽い社員に連絡することが増えてしまい、業務が属人化しがちになりかねません。しかし、Chatworkを使うことで連絡内容が文字として残るので、まず伝達ミス・漏れが防げます。そして、基本的には1対1のやり取りではなくグループを作って連絡事項を共有することで属人化も解消できます。例えば、従来はAさんが担当していた業務も、グループチャットを見て「その業務、いま近くにいる私が担当します」とか、新人の社員が「その業務を一度見ておきたいので一緒に行っていいですか?」といった感じに、各社員から自発的に行動することが増えてきました。Googleworkspaceは、若手からベテランまで社員全員にメールアドレスとID、パスワードを持たせ、さまざまなサービスを使いながら慣れてもらうことからスタートしました。今はスプレッドシートを使うことが多いのと、日報はGoogleFormを活用しています。
排水管清掃の様子
――社員の方々の反応はいかがでしたか?
 導入当初は、社員も「これで合っているのかな?」という感じで手探りの部分もありましたが、2年前に中小企業のクラウド活用促進のためのプロジェクト「全国中小企業クラウド実践大賞」で中国総合通信局長賞を受賞したことが一つの大きな手ごたえになりました。それまでは、自分たちの取り組みが正しいのかどうか分からなかったのですが、初めて外部から評価されたことで社員の自信につながったと思います。私たちの仕事は、求職においてファーストチョイスになりにくいのが現実で、どうしても仕事に対してネガティブになりがちです。そんな中で、外部から評価されたことによって社員の意識が変わり、みんなの姿勢がポジティブになっていきました。グループチャットの中でも、情報共有にとどまらず、「ここにスプレッドシートを付けて、現場で数字を入力していけばもっと有効に使えるよね」とか、「鉄くずの相場を表すグラフを付けてみたらどう?」といったアイデアもどんどん出るようになりました。クラウド化は業務の効率化やスピードアップによる生産性の向上にとどまらず、仕事に対するモチベーションアップなど社員の意識変化、さらには離職率の大幅低下という大きな副産物をもたらしてくれました。
 新しいシステム導入は、一般的に年配になるほどハードルが高くなる傾向がありますが、当社は63歳のベテラン社員さんが「僕ができなければ導入が止まっちゃうから」と、積極的に取り組んでくれたのがありがたかったですね。割合としては少ないものの、変化を怖がる社員もいたので、Chatworkもいきなり業務で使うのではなく、雑談チャットの中にタスク機能などを入れたりして最初は半分遊びの感覚で導入していきました。実は、2021年に事務所をリフォームしたのですが,これもクラウド化を進めるための取り組みの一環です。引き出しがたくさんある昔ながらのデスクが並んだ中でペーパーレス化を進めようとしてもなかなかうまくいかないと思ったので、あえて収納スペースの少ない職場環境にリフォームし、環境からペーパーレス化を進めていきました。
収納スペースを減らした職場環境
――今後、会社としてめざすことは何ですか?
 DXを推進するにあたっては、クラウド化を目的にツールを導入するだけではだめで、ツールをどうやって使いながらみんなで工夫して実践していくのかが大事だと思います。そのためには、会社としてのビジョンを明確にして会社全体で取り組まなければなかなか成功しないのではないでしょうか。私たちはDXを今後も進めていくことで業務効率を高め、利益率を上げていけば賃金アップや有給休暇の取得率にもつながり、ひいては社員の働きやすさや幸せにもつながっていくと思っています。
 私たちの業界は、こうした取り組みについて遅れている部分があると自認していますが、その中で他社よりもリードしているということで社員たちに誇らしい気持ちを持ってもらえたらうれしいですね。そして、電気・ガス・水道と同等に重要なライフラインを支える業者として、地域の皆様から頼りにしてもらえる存在でありたいと思っています。
太陽都市クリーナー全社員集合写真
株式会社太陽都市クリーナー ホームページ:https://www.fuchu-ttc.co.jp
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