2024年11月28日(木)に「先進事例から学ぶセミナー」を広島コンベンションホールで開催し、ビジネス変革に取り組んでいる経営者層・管理者層・DX推進担当や支援機関の方々など、69名に参加いただきました。
セミナーは講演、トークセッション及びコンサルテーションセッションの三部構成で行いました。
セミナーは講演、トークセッション及びコンサルテーションセッションの三部構成で行いました。
第1部 講演
第1部の講演では、2名の方にそれぞれ次のテーマでお話しいただきました。
【講演1】 有限責任監査法人トーマツ パートナー 遠藤 敬一 氏
「なぜ企業のDXは失敗するのか 10年先も生き残るためのビジネス変革」
【講演2】 株式会社鈴花 総務部長兼DX推進室長 有田 裕次 氏
「平均年齢61才!老舗着物店が取り組む 伝統を守り、進化し続けるDX」
講演1
講演1では、「DXの基礎」「DXを成功させるために必要なこと」「これからの地域でのDXの展望」についてお話しいただきました。企業が生き残るためには、自社を取り巻く環境の変化を捉え、自社の事業価値を再定義し、新たなビジネスモデルを構築できるかが問われています。
DXが失敗する要因として、「デジタル技術の導入が目的化してしまうこと」「経営者のコミットメント不足」「社内のデジタル知見の不足」「十分な人的リソースや資金が確保できていないこと」が挙げられました。
DXを成功させるためには、まずは効率化から始めて段階的に進めることが重要で「顧客の視点を取り入れる」「顧客の課題を解決するためにデジタル化を検討する」ことが必要とのことでした。さらに「DXは単なる技術導入ではなく、組織変革である」ことが強調され、「デジタル技術を活用する人や組織そのものを変革しなければ、持続的な改善や価値提供は難しい」とのことでした。
実際の成功事例として、経営者がDXの必要性を理解し、顧客視点でのサービスの見直しやデジタル人材の確保・育成を進めた企業の取組を紹介しながら、「DXを成功させるためには、経営者の強いリーダーシップと全社的な協力体制が不可欠」であり、「組織変革の一環として、社内のデジタル人材の育成にも力を入れながら、外部の専門家を上手く活用することが重要」と語られました。
地域でのDX推進については「DXが儲かる取組であることを経営者が認識し、DXを投資と捉え予算や人的リソースを確保すること。そして顧客のフィードバックを基に継続的に改善を行うことが、DX成功のためのポイント」としてまとめられました。
講演後の質疑応答では、経営者にDXの重要性を理解してもらう方法や、システムに詳しい人がいない場合の対応策等について、参加された方々から活発な質問が寄せられました。
登壇者の実践的な回答は、多くの参加者にとって大きなヒントとなり、今後のDX推進に向けた意欲を高めるきっかけとなったと思います。
講演2
講演2では、従業員の平均年齢が61歳と高齢化が進む中でDXを進める取組についてお話しいただきました。
登壇者は、株式会社鈴花の総務部長兼DX推進室長として、人事労務管理のデジタル化や購買データに基づく顧客分析に取り組んでいる同社において、これらの取組を中核的に推進されている方です。
特に同社は、顧客視点でのDXを重視し、従業員や顧客との接点を増やすための取組を実施されています。「当社のDXの基礎は、2015年にコミュニケーションツールを導入し、社内のコミュニケーションや業務効率を向上させたこと」「熊本地震の際には、チャットツールを活用して迅速な対応ができたことが、クラウドツールの重要性を認識するきっかけとなったこと」「BIツールを利用して、印刷コストの削減やデータの可視化を行い、小さな成功体験を積み重ねたこと」についてお話しいただきました。さらに、「社内のイベントでは、写真投稿アプリを開発し、社員間の一体感を高める取組を行った」とDXに関する社内展開についてお話しいただきました。
また、「着物版のデジタルクローゼット機能を持つアプリの開発やLINE公式アカウントを通じた顧客との直接的なコミュニケーションの強化」を行うとともに、「顧客電子カルテの開発により販売員の頭の中だけの記憶や手帳への記録といった個人的な情報に依存しない顧客情報の管理を実現し、サービスの質を向上させた」とのことでした。
これらの取組において登壇者からは「社内外の人々を巻き込むこと、ペルソナ設定やロードマップの作成、従業員や顧客を巻き込んだ勉強会の開催などを通じて、社員のITリテラシー向上や顧客体験の充実を図ること」の重要性についてお話いただきました。
同社は、こうした取組を通じて、「日本DX大賞2023」のUX部門大賞を受賞されています。今後も顧客中心のサービス提供を目指されており、リアルとデジタルを融合し、着物文化の魅力を広く発信し続けることを目標とされています。DXの本質は「顧客に寄り添い続けること」とし、伝統と革新を両立させる取組を進めていく必要性についてお話しいただきました。
参加者との質疑応答では、登壇者自身は、ITスキルをどのように習得したか、社内人材のデジタルスキル習得方法、DX推進に対する社内の抵抗勢力への説得方法、といった質問が寄せられ、参加者の高い関心が伺えました。
第2部 トークセッション
第2部のトークセッションは第一部の登壇者に加え、株式会社鈴花の代表取締役社長もパネリストにといして参加いただき、ディスカッションを行いました。
<パネリスト>
株式会社鈴花 代表取締役社長 森 啓輔 氏
株式会社鈴花 総務部長兼DX推進室長 有田 裕次 氏
有限責任監査法人トーマツ パートナー 遠藤 敬一 氏
<モデレーター>
有限責任監査法人トーマツ シニアマネジャー 清老 伸一郎 氏
トークセッションでは、「デジタル技術を活用した変革を計画・実行する際の会社関係者の巻き込み方」と「DXを推進するために必要な人材の確保・育成」という2つのテーマで意見交換を行いました。
【テーマ1】「デジタル技術を活用した変革を計画・実行する際の会社関係者の巻き込み方」
有田氏からは、「デジタル技術を活用した変革を計画・実行する際には、まずコアなメンバーで計画を策定し、ゴールを明確にした上でデジタル技術の必要性を確認し、その後、DX推進室を立ち上げて、各部署の現場の声を反映しながら実行した」との説明がありました。
森氏からは、「トップランナーを作り成功事例を社内に広め、現場が受け入れやすい形で変革の機運を高めることが重要」との意見が出ました。
遠藤氏からは、「社長直轄の組織を作り現場のキーマンを巻き込む。さらに、モデルケースを作り変革の機運を高め、成功体験を共有しながら組織全体を変革に巻き込むことが重要」との意見が挙がりました。
【テーマ2】「DXを推進するために必要な人材の確保・育成」
有田氏からは、「ITやデジタルが好きな人材を見つけ、DX推進メンバーとして参画してもらった」との意見が出ました。また、「社内での勉強会や外部セミナーへの参加を積極的に推奨することが効果的」と言及されました。
森氏からは、「学ぶ力がある人材を見つけ、その人に新しいことを挑戦させることが重要」との意見が出ました。
遠藤氏からは、「ビジネススキルとデジタルスキルのバランスが重要。あくまでもデジタルはビジネスを成長させる手段であり、ビジネスの課題が何なのか、顧客が何を求めているのかを整理する力のある人材を社内で確保・育成していくことが重要」との意見がありました。
最後に、参加者から「DXに取り組んでいなかったら、会社はどうなっていたと思うか?」という質問に対し、森氏は「コロナの影響で会社が存続できなかった可能性が高い。DXのおかげで経営者としてのストレスが軽減され、次のステージへの布石を打つことができた」とお話しされ、参加された方々へDX推進に向けたエールを送りました。
第3部 コンサルテーションセッション
まとめ
セミナー実施後のアンケートでは、「効率化や生産性向上の前に、すべては顧客視点が大切であることがよく理解できた」「スモールスタートが成功の秘訣であることを参考としたい」「使えそうなツールをまずは使ってみる。だめならやめる。といった文化を当社でも根付かせる必要性があることを理解した」「トップランナーの大切さ、小さな成功体験を積み重ねることの大切さが非常によくわかった」などコメントがありました。
参加された方々は、DX成功の考え方や実例にもとづく成功のストーリーを聞くことでビジネス変革に向けた次なる一歩を踏み出す気づきを得られた様子でした。
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ビジネス変革に向けた中核的人材育成プログラム
今回のセミナーは、ビジネス変革に向けた中核的人材育成プログラムの一つとして開催しました。
2025年3月10日(月)には、異業種交流イベントを開催予定です。
詳細な内容などが決まり次第、本サイト(https://hiroshima-dx.jp/)で告知します。
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広島県では、今後もDX推進に向けた様々な取組を行ってまいります。
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